この調査結果が、企業の傾向を忠実に反映しているものだとすれば、マネジャー教育が優先され、若手育成は後回し、ということになるのかもしれません。

 では、「今後3~5年において重要性がより高まると考えられる人材はどの階層ですか」という設問そのものにつっこみを入れてみましょう。

「新入社員が一人前になるには、3年から5年かかる」というのは、松尾睦・神戸大学教授と私たちが実施した共同調査からも明らかになった知見です。

 さて、ここで問題です。

「新入社員がいまから3年ないし5年で達成する成長と、上級管理職のそれとでは、どちらが収益貢献効果が大きいでしょうか」

 唯一絶対の正解はありません。状況によって、また業種や職種によっても違うでしょう。しかし、「新入社員が達成する成長がもたらす収益貢献効果」が上級管理職のそれより大きいケースは少なからずあるはずです。なぜなら、それは収益貢献度ゼロ=まるごとコストである状態から、一人前の稼ぎ手になるという、ほとんど無限大の成長であるからです。

復活する人材開発予算
主たる投資対象はマネジャー層か

 企業は業績が低迷すると、まず人材育成のための教育費を削減する、というのは、よく知られた事実です。NTTレゾナントの調査の中には、人材開発予算に関する項目もあります。

 人材開発の予算は「変更の予定無し」が43%でもっとも多いが、「増加傾向」が32%でこれに次ぐそうです。また、「減少傾向」と回答した割合が前年の45%から25%へと大幅に縮小した、とのことです。