ベビーシッターが「あたりまえ」になる日を目指す
前園 ベビーシッターの事業は今後、日本で普及していくのでしょうか? 海外では子育てをする上で、あたりまえの選択肢として存在していますが。
経沢 いろいろなご意見があると思いますが、私は広まると信じています。私が「理想のベビーシッター」を普及させたいとも思っています。自分自身が3人の子供を産み、育児に悩んだ経験があること、そして、ベビーシッターのユーザーとして感じることが多かったこと、さらに、経営者としてIT業界で長く経験を積んだので、それらの経験を組み合わせすると、自分が一番強い想いがあり、現実に形にしていかなくてはいけないという使命感のようなものは勝手に持っています。
前園 本でも「古い母親像にとらわれないで」「昭和の育児スタイルに縛られないで」と提唱されていましたね。育児を外注するのは悪いことではない、と。
経沢 はい、「外注」っていう言葉を使うと誤解を招きやすくなってしまうのかもしれませんが、現代社会を生きる女性は、あれもこれも自分がやらなきゃ、子どもが騒いだら自分がなんとなしなくちゃ、仕事と両立できなかったら自分が悪い、そんな風に「全部自分の責任」と大きなプレッシャを抱えていると思います。そうすると、育児に対して楽しいとかのポジティブなイメージを持てなくなって、少子化はますます加速してしまいます。本来、育児は「社会」でするものでした。なので、いまの時代に新しい選択肢を付け加えたいと思っています。
前園 それを聞いて、ぼくの母のことをお話したいと思いました。シングルマザーだった母は、ぼくたち兄弟を育てるために、毎日必死で働いてくれていたんです。
経沢 働くお母さんだったんですよね。
前園 はい。一緒にいることは、ほとんどなかったかな。でも、サッカーを習いにいく週末は送り迎えをしてくれて、お弁当もつくってくれて、それが楽しみでした。ずっと、働く母を見て育ってきたので、働いている女性は大好きです。自立した女性は、素敵だなと思います。だから、いまの女性たちもベビーシッターサービスを賢く活用して、仕事を続けてほしいなと思うんです。
経沢 安心して、安価に頼めるベビーシッターサービスがキッズラインです。いま現在、4000世帯以上の登録があるんですよ。
前園 そんなに。
経沢 ただ、登録後すぐ使う方もいれば、半年くらい経って使い始める方もいます。おそらく「いざというとき」のために登録して、そのタイミングがきたら使うのでしょう。
前園 安くて安全で簡単に使える、となると、リピーターは多そうですね。
経沢 そうなんです。1回使うと、手放せなくなると言っていただけます。だから、焦らず、安心、安全を優先して、広めて生きたいと思います。よいベビーシッターさんを採用したり、常にサービスのクオリティを上げることも重要な課題ですからこれからも丁寧に進めていきます。
前園 じっくり、着実に、と。
経沢 はい、とはいえ夢は大きく持っています。たとえば、いま多くの方はAmazonがないと困るし、その先にクロネコヤマトがないと困りますよね。そのように、キッズラインも「なくてはならない」社会のインフラサービスになることを目指しています。たとえ10年かかっても成し遂げようと思っています。
(後編)に続く
経沢香保子(つねざわ・かほこ)
株式会社カラーズ代表取締役社長。
桜蔭高校・慶應大学卒業。リクルート、楽天を経て26歳の時に自宅でトレンダーズを設立し、2012年、当時女性最年少で東証マザーズ上場。
2014年に再びカラーズを創業し、「日本にベビーシッターの文化」を広め、女性が輝く社会を実現するべく、1時間1000円~即日手配も可能な安全・安心のオンラインベビーシッターサービス「キッズライン」(https://kidsline.me/)を運営中。
著書に、『自分の会社をつくるということ』(ダイヤモンド社)などがある。
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