自ら信じる方向へチームを先導するのがリーダーの役目
前園 ぼくはサッカー、経沢さんはビジネスが好きで、ときに失敗することがあっても、ずっと続けているわけです。でも、うまくいかないとき、不調なときは、周りから人が去っていったり、応援してくれる人が少なくなったりしますよね。上場直後のようないいときではなく、何かトラブルや問題が起きた後のような悪い状況のとき、周囲との関係性はどうでしたか? 良好に保てていました?
経沢 そうですね、良好に保つには工夫が必要だとは思います。たとえば、見ず知らずの方がネット上で、私自身や会社の悪口を書いているのを見てもあまり気にならないんですが、身内から言われるとけっこう傷つきます。「私のせいで迷惑をかけてしまったな」「他の皆もそう思っているのかな」と気になってしまって。でも、最近はそんなふうに思うこともなくなりつつあります。
前園 何があったんですか?
経沢 1つは、普段からの振る舞いに原因があると分かりました。批判される確率が高い人は(あくまでも確率論ですが)、普段からキツい態度や言い方で、無意識に相手にマイナス感情を蓄積しているのかもしれません。そうすると、何かこちらがミスしたときに倍以上に批判される確率は高い気がします。これは、社内のみならず、世間に対しても同様だと思います。なので、言葉遣いや態度を柔らかくしておくことは大切だと思いました。
前園 わかります。
経沢 はい、ただ、一つ付け加えるとすると、たぶん前園さんも私も「嫌われないため」ではなく、「自分のやっていることを誤解されないため」に、周りから好印象を持ってもらえるよう、努力しているのだと思います。私の場合は、お子さんの命を預かるビジネスをしているのでなおさら、誤解されないようにしないといけないとは思います。
前園 そこはぼくも意識して変えてきました。媚びるわけではなく、ただ純粋に誠実な態度をとる、というふうに。
経沢 そうですね。あと、もう一つ苦境で学んだことは、苦境のときこそぶれてはならないということです。たとえば社員が「本当に大丈夫なんですか?」と不安がっていたとしても、自分が目指している方向に進んでいるので、ドーンと構えて「大丈夫。ついてきて」と引っ張れるようになりました。
前園 大事な姿勢ですね。ぶれない軸はリーダーに必要不可欠ですから。
経沢 キッズラインは先行投資として数千万円を投入してつくったサービスです。ニーズがあるから、すぐに利用者が急増するだろうと思いましたが、最初は1日2〜3件しか予約が入らない日が続いて。
前園 2〜3件って、2000〜3000円くらいにしかならないんですよね。経沢さんが「駄菓子屋のほうが儲かるね」と冗談を言って社内を盛り上げたと、本に書かれていたのを覚えています。昔のメンタルだったら、そんなとき、どうしていたでしょうね。
経沢 早くなんとか回収しなくちゃ! と相当焦ると思います。
前園 その慌て具合は社員に伝わって、不安にさせるでしょうね。
経沢 そうなんです。だから、焦らないことにしました。「1日2~3件、ひと月の売上が5万円でも、1ヶ月後は7万円、2ヶ月後は10万円、3ヶ月後は15万円、と順調に伸びているから大丈夫と常に言っていました。例えば毎月130%で成長していたら1年で10倍以上にはなります。他にも、いろんなプレゼン大会に出場し、優勝をもぎ取る様子を見せたりして、社員がたくさんの希望を持てるような環境を作れば、事業は自ずとうまくいくと考えています。
前園 前の会社ではどうでしたか?
経沢 まえの会社は、最初から黒字でしたし、案件自体の単価も高かったのですが、実は逆に不安でいっぱいでした。それは、1回目の起業なので、毎日毎日が初体験で感覚を掴むのが難しかったというのもあったかもしれません。
「絶対うまくいく」という自信はやはり2回目の方が大きいかもしれません。