「子育てをしながら仕事を続けるのは、決して楽なことではない。そして、子育ては、とても素晴らしい仕事だ。でも、やり方次第で、夫婦で協力すればいかようにも工夫できる。大変だと感じるならば、無理に両立しようとしなくてもいいのだ。たとえば、家事・育児をときどき外注するのも一つの手段だ」
本連載では、経沢香保子さんの新刊『すべての女は、自由である。』の内容をベースに、お伝えしていきます。今回は、「仕事と育児の両立」についてです。(撮影・Junko Yokoyama)
「1億円を失いたい? それとも稼ぎたい?」
「1億円を失いたい? それとも稼ぎたい?」
ニュースでそんな比較がされていた。30歳で正社員の職を手放した女性は、育休後などにパートで復職したとしても、65歳まで正社員として勤続し続けた女性と比べて、生涯賃金が1億円以上も少なくなるそうだ。
そんな衝撃的な数字が、近年明らかになっているけれど、「一生働くつもりはない」と考える女性はいまでも少なくない。育児支援は徐々に充実してきている。それでも、まだ不十分なところがあるからだろう。「育児は大変だから、仕事との両立は無理だと思う」「結婚したら家事・育児に専念したい」をはじめとして、理由は様々だ。
確かに「出産まで働こう」など、期間を短く区切ることで力を発揮できるのも事実だが、もし「どうせ出産したら(結婚したら)辞めるから」というスタンスで働くとしたらどうだろう。周囲からも「いつか辞める人」と見られてしまうと仕事はやりにくくなるかもしれない、先を見据えた丁寧な仕事、評価される仕事に忍耐強く向き合えるだろうか。
リアルな話をしよう。一度でも正社員の立場を放棄すると、現場に正社員で復帰するのはかなり難しいのが現代だ。パートやアルバイトの職は見つけられても、ルーティンワークが多いかもしれない。正社員時代と比べてやり甲斐を感じづらく、やる気を失う可能性もあるかもしれない。そして、さらに冒頭の「1億円の生涯賃金の差」だ。そうこうするうちに「この仕事も辞めたい」といった負のスパイラルに入り込んでしまうかもしれない。