「成功体験の違い」とは、われわれ以上の世代が持つ、「経済大国としての日本」をリアルタイムで経験してきた自信や自負心であり、それはいまの学生が感じている「日本経済は、中国の後塵を拝する」という差し迫った脅威、自信の喪失と真逆の価値観です。そしてこの「成功体験の有無」が、「世の中の雰囲気の捉え方の違い」へと繋がっていくのです。

若者に蔓延する
日本へのあきらめムード

 ここ最近、環境問題をはじめとして、政治、経済、雇用問題に至るまで、世の中には、「どうせ」という雰囲気が蔓延しています。前回の第22回で書いた「エコ疲れの蔓延」もその具体的な例の1つです。

 高度経済成長の時代を経て、高い技術力を背景に日本が世界経済の中心に躍り出た成功体験を持つ、われわれ以上の世代は、「どうせ」と思いつつも、脳裏には過去の成功体験が焼き付いており、社会問題に遭遇しても「何かが起こる(かも知れない)」という希望や期待感は完全には捨て切れていないように思うのです。

 もっとも、世の中の全体の雰囲気が、「誰かが何とかしてくれるだろう」という他力本願モードにあることは大きな問題ではありますが、希望を捨てていないという点だけは評価できます。

 一方、いまの学生は、「どうせ」という世の中の雰囲気を「あきらめムード」で捉えがちです。経済的な成功体験を持っていないがゆえに、停滞する日本経済に希望を持てず、違う価値観を模索する動きも多く見受けられます。事実、仕事を選ぶうえでお金など経済的な面ではなく、社会に対して貢献することを望む学生は、私のゼミにも多くいます。

 こうした学生は、社会の仕組みや経済のことを十分理解しておらず、「どちらかというと避けて通っていた」という冷静な自己分析をしている学生が私のゼミではほとんどです。しかし、この「どちらかというと避けて通っている」という経済の仕組みについても、彼らの関心と関連付けて説明してあげることで、しっかりと本質を理解させることは可能です。

ステレオタイプではなく、
本質を捉えた見方を

 7月13日、ユニクロを展開するファーストリテイリングは、バングラデシュのグラミン銀行と合弁会社を設立することを発表しました。利益の極大化を目指すのではなく、“ソーシャルビジネス”として、収益を株主への配当ではなく、雇用創出や、事業への再投資、さらには従業員、地域社会に還元するという、日本企業では初の取り組みです。

 とかく、「企業の社会貢献」という側面から注目を集めるこの事業ですが、立教グラミン・クリエイティブラボの一員として、私自身もこのプロジェクトのサポートを行なっていることもあり、このプロジェクトを進めていくことの大変さは、重々承知しています。

 しかし、いまどきの学生は、「ユニクロという身近な企業が、バングラデシュで社会貢献事業を行なう」というように、ステレオタイプ的に捉えがちです。そこで、私のゼミではあえて、「この事業(ソーシャルビジネス)の意義を株主に対して説明せよ」というテーマを学生に与え、「社会貢献」ではなく、「ビジネス」という切り口から、この事例をグループワークで考えてもらいました。