訴訟リスクもある
日欧・米国審査のダブルスタンダード

 “燃費偽装”問題に話を移そう。二つの問題が浮上している。

 第一は、燃費性能が向上すればするほど、カタログ燃費と実燃費(実走行燃費)の乖離率が大きくなってきていることだ。特に、世界最高燃費を更新し続けているHEVの乖離率は4割に及ぶ(表参照)。

 自動車ユーザーは、電装品の使用や気象条件、運転技術等によって燃費差が出ることを経験則としてわかっているとはいえ、4割の乖離は大き過ぎる。

 第二は、燃費審査の公平性の問題である。審査過程には、「1台当たり5日間を要する」(審査官)。自動車メーカーは新型モデル1車種につき少なくとも4、5型式を申請するので、何から何まで測定していては審査業務が追いつかない。そのため、燃費算出に必要なある項目に関しては、測定値に代わる「設計値」の採用が認められている。この設計値こそ、“燃費偽装”の温床になりかねない。

 設計値とは、自動車メーカーが計算上この数字が出ると思って設計しました、という自己申告の値だ。つまり、実はズルだと気づいていても、正しいと思ってこの数値を使ったと申告すれば、もっと燃費をよくすることができる。

  例えば、車両の走行抵抗を測定する惰性走行試験(コースティングダウンと呼ばれる)というのがある。ある欧州のテストコースで測定された走行抵抗の数値が低かった場合、この数値が設計値として採用されれば、燃費改善に有利になる。欧州では、民間企業が審査業務を政府から受託している場合が多く、彼らは顧客(自動車メーカー)がいないとビジネスが成り立たないため、審査業務が甘くなる場合が少なくないのだ。