三菱自工に続きあのスズキまで!?
燃費不正問題に揺れる自動車業界

燃費不正問題で揺れる「火中の栗」三菱自工を、日産はなぜ拾ったのか? Photo:REUTERS/AFLO

 燃費改ざん不正が発覚した三菱自動車工業(以下、三菱自工)の騒動は、相川哲郎社長の引責辞任にまで至った。また、5月18日に自動車各社の燃費計測データが国交省に報告される中で、スズキが国の定める計測方法と異なる計測データを用いていたとして、スズキのトップが謝罪会見を行う事態にまで波及することとなった。

 燃費データ改ざんによる不正が明るみに出た三菱自工と国の規定と異なる燃費測定をしていたスズキのケースは異なるものだが、燃費に対する消費者の信頼が揺らいでいることは確かだ。これを機に、燃費や排ガスのレギュレーション(規則・規制)を自動車業界と国土交通省が共に明確なものに改めていく必要があろう。

 一方、軽自動車燃費改ざん不正で揺れる三菱自工は、18日に軽自動車以外の扱い車種ほぼ全て(タイ生産のミラージュ以外)において燃費不正があったことも表明した。その三菱自工と34%出資の資本提携を締結し、幅広い戦略的アライアンスを目指すことになったのが、日産自動車(以下、日産)である。三菱自工は、日産の支援によって生き残る道を選んだ。これにより、ルノー日産連合に三菱自工が組み入れられ、トヨタ、VW、GMに匹敵する自動車企業連合が誕生することになった。

 三菱自工が軽自動車の燃費不正を認めて発表したのが、4月20日のこと。それからGW明け後の5月12日に日産のカルロス・ゴーン社長と三菱自工の益子修会長が両社の資本提携を発表するという、実に電光石火のような展開だった。

 日産が2370億円で三菱自工株34%を取得することで、三菱自は事実上、日産の傘下に入ることになったわけだが、ゴーン日産は覇権主義をとらず、三菱自動車の自主性と三菱ブランドを守るなかで、両社の相乗効果を狙うという。

 リコール隠しに留まらず、またもや燃費不正という不祥事を繰り返した三菱自工は、「会社の存亡に関わる重大な案件」(相川哲郎社長)と事の深刻さを認め、「ユーザーや関係各方面への補償問題も含めてこれを収束させること」を大前提としていたはずだ。しかし、軽自動車の燃費不正への対応よりも早く、その開発合弁先である日産との資本提携へと同社が一気に突き進んだ理由は何だったのか。

 その背景には、三菱自工の生き残り策に対する三菱グループの目論見、日産と仏ルノー連合を17年も率いるカルロス・ゴーン社長の世界覇権への野望など、両社の思惑が絡み合っていることが見て取れる。今回の資本提携劇に至る三菱自工、日産のそれぞれの事情と背景を捉えてみた。