ついに、三菱自動車工業(三菱自工)に対する国の「技術的な強制調査」が始まった。
大型連休の中日にあたる、5月2日(月)の午前7時、埼玉県熊谷市の郊外。独立行政法人・自動車技術総合機構・交通安全環境研究所(通称:交通研)の自動車試験場の正面玄関前は、在京テレビ局全社のカメラや、新聞社・通信社の記者たちが集まるという異例の事態となった。
我々報道陣が待ち構えていたのは、1台の車両運搬車。そこには、三菱「eKワゴン(スポーツ仕様のeKカスタムを含む)が2台、同「eKスペース」が1台、合計3台の軽自動車が搭載されていた。
この3台は、石井啓一国土交通大臣が4月26日の会見で述べた通り、28日に設置の同省自動車局と独立行政法人・自動車技術総合機構による「三菱自工の燃費不正問題」に対応するタスクフォースの指示により、三菱自工が持ち込んだ車両の一部だ。
これら車両を使って、交通研が5月2日から「型式指定の燃費試験」を行い、その結果はタスクフォースが6月中に発表予定の「取りまとめ」の中で明らかになる。その初日の試験が始まる前の時間にあたる、午前7~8時にかけて、報道陣向けに「燃費・排出ガスの確認試験の実施について」と題して、走行抵抗値の測定試験(惰行法)の説明とデモンストレーションが行われた。
異例の、国による走行抵抗の測定試験
錯綜する報道のなかで規定と技術を再確認すべき
一連の三菱自工による燃費不正問題。その発端は、同社が20日に記者会見で発表した「実際より燃費を良く見せるため、型式指定の燃費試験に際して提出を求めている走行抵抗値について不正行為を行っていた」(国交省HPの石井大臣談話より抜粋)ということだ。
そして三菱自工は、その不正行為とは、国が定める「惰行法」ではなく、アメリカ市場向けの「高速惰行法」を採用し、それを基に走行抵抗値を算出し、さらにそれら値を意図的に操作し、実際の燃費よりも優れた値が出るようにした、と説明した。
この20日の会見以来、メディアでは「燃費不正フィーバー」状態となっており、その多くが、不正はいつから、誰の指示で行い、経営陣を含めて社内でどのような意思決定プロセスによって決まったのか、といった「犯人探し」の視点で報じている。そのなかに、技術論が中途半端な状態で散りばめられているように感じる。
そこで本稿では、認証審査を行なう交通研の説明を基に、議論を規制、規定、そして技術に集約したい。