安倍首相は年明け以降、世界経済の減速などから、消費増税延期の空気を醸成してきた。ノーベル経済学賞受賞者を呼んで「増税延期」の意見を聴き、伊勢志摩サミットで共同宣言に「政策をバランスよく進める」という、いかようにも解釈できる表現を盛り込ませ、消費増税の延期と、選挙対策としてのバラマキに、「国際的なお墨付き」を得ようとしていたのは明らかだった(第131回・5p)。だが、岡田代表の発言で、首相の目論みは少し狂ってきたといえるかもしれない。

財政再建を真剣に考える国民は
参院選での選択肢を失った

 岡田代表の「増税延期先出し戦術」が当たるかどうかは別として、1つ指摘しておきたいことがある。それは参院選で「財政再建を真剣に考える国民」にとって、選択肢がなくなったということだ。

 アベノミクスに対する高い支持が続いたので忘れられてしまっているが、国民は、第二次安倍政権が発足するまでは、歴代政権が苦心惨憺取り組んできた財政再建や持続可能な経済運営にある程度の理解を示していた。野田佳彦政権時には、国民は消費増税の必要性に一定の支持があったのは間違いない(第40回)。

 アベノミクスを一言でいえば、株高・円安に誘導することで、企業が短期的に営業利益を増やして目の前の決算期を乗り切り、一息つけるというものだ。長年のデフレとの戦いに疲弊し切っていた国民は、企業経営者や、部長、課長、その部下の平社員の「とにかく利益が出るならなんでもいい」という気持ちで、アベノミクスを支持した(第75回・1p)。しかし、アベノミクスの化けの皮が剥がれつつある今、真面目に財政再建を考えていたことを思い出す国民が、少なくないはずだ。だが、彼らには参院選で支持すべき政党がないのである。

安倍政権は増税実施を決断しても
もはや「財政健全化の国際公約」達成は遠い

 安倍政権は、増税延期を決断しようがしまいが、財政再建に取り組む政権と見なすことはできない。安倍政権が誕生する前、民主・自民・公明の三党は消費増税の「三党合意」を成立させていた。だが、安倍政権が誕生すると、自民党内で三党合意を進めた政治家は、アベノミクスの意思決定から外された(第51回・2p)。