米国経済のためになるとは限らない
トランプ氏の「アメリカ・ファースト」
足元の経済・金融市場はほとんど硬直状態というところだが、米国の大統領選挙や英国の国民投票など政治にまつわるトピックはそれこそ枚挙に暇がない。政治に関しては門外漢の経済学者としても、米国のトランプ氏の発言など気になることが多い。
最近のトランプ氏の発言を見ると、「アメリカ・ファースト(米国の事情が最優先)で、海外からの輸入品には高関税を課する」としている。そうすることによって、米国内の労働者を保護すると主張する。
しかし冷静に考えると、米国企業が海外で生産した製品を米国内に持ってくる場合、高関税が課されるとなると、米国の消費者はその分の関税を負担することになる。米国企業としても、海外の安価な労働力を利用するメリットを放棄せざるを得ない。
米国ほど大規模な経済になると、経済を巡る様々な要素は複雑に絡みあっており、同氏が想定するほど簡単なことではない。少なくとも、同氏の不動産ビジネスのように単純にはいかない。
また、米国をはじめ世界の主要国が自国の利益ばかり追い求めるようになると、様々な問題を巡って国際協調体制を作ることが難しくなる。その結果、主要国がメリット・デメリットを分け合いながら世界的な問題に対処することができなくなる。それは、世界の政治・経済にとって大きなマイナス要因だ。
卑近な例で見ると、わが国では舛添知事の公私混同問題が取り沙汰されている。これも政治家が担う責任の一つだろう。今後、政治家が背負う責任は一段と重くなるはずだ。
必ずしも米国だけではない
ポピュリズムへ旋回する主要国の政治
トランプ氏が、共和党大統領候補になることがほぼ確実になっている。今のところ大統領選挙の本選になると、民主党のクリントン氏が勝利するとの見方が多いものの、最近の米国の世論調査では、トランプ大統領誕生の可能性を無視することはできない。
トランプ氏は、これまで「米国とメキシコの国境に高い塀を作って、密入国者を取り締まる」などかなり現実離れした主張を行ってきた。