小売店バイヤーも膝を打った!
売上を100倍にした紹介キーワード

 仮に、ビールがあったとしよう。一方は『いつものビール』。もう一方は『一度も飲んだことがないビール』。後者は消費者が小売店を訪ねても、そもそも見もしない。だが、缶にデカデカと『泡が立たない』と書いてあったら?消費者は『?』と思って、手にとってくれるかもしれない。そして、泡が立たないメリットと、なぜ泡が立たないビールが必要なのか、説明を読んでくれるかもしれない。

 キンレイが実施したのは、そんな戦略だった。彼らは袋入り冷凍麺に、大きく『水がいらない』と書き、これが爆発的ヒットの最後の一押しとなったのだ。

 きっかけは、ブランディングの延長線上にあった。「当社は、冷凍麺のメリットをいろいろ書きたいのです。ストレートスープであること、スープと麺を別々で凍らせ、スープの上に麺を置いているから、ゆでたての食感が楽しめること。原材料も具も厳選していること…」(福田氏)

 でも、お客はそれらの説明をすべて熟読してくれるほど親切ではない。

「そこで、何かをアピールするなら、まず、興味を持ってもらわなければいけない、と考えたのです。当社はお客様に技術力の高さやおいしさを訴求すれば売れる、と考えていました。しかし、商品や企業がお客様の目からどう見えるか、まだまだ考える余地があったのです」(福田氏)

 具体的なきっかけは、同社の営業が「もっと目立たせよう」と主張したことだった。では、何を主張するのか。「おうちで簡単!」ではカップ麺でも乾燥麺と同じ。さりとて、具材がたっぷり入った高級感は、冷凍食品売り場では求められていなかった。

 そんな議論の中で『お水がいらない』というワードが生まれた。

「そもそも『鍋があるなら、たいてい水もあるはず』という議論もありました。しかし『これは気になる』という意見が大勢を占めたのです。また『お水がいらない』であれば、スープがストレートであることも伝えられるかもしれません」(福田氏)

 会社全体が「この方向だ」と確信を持ったのは、販売後、小売店から反応があった時だった。スーパーのバイヤーが「売り場でお客さんから『お水がいらないってどういうこと?』と質問されることが多い」と言われたのだ。

 次第に売上は伸びていった。ユーザーは商品に興味を持って、初めて同社の難解なメッセージを理解したのだ。この商品が『アルミ容器入りの冷凍麺をアルミ容器からとりだしたもの』で『エコだし、自宅で具をアレンジ可能』である――と。

「結果、すごいことが起きました。販売量がぐんぐんと伸びて行き、現在は年間100万食を優に超えました。製法はまったく変えず、売上が100倍にまで伸びたのです。その後、小売店の方からたびたび『お水がいらないシリーズは新商品出さないの?』などとお問い合わせをいただきます。商品名より『お水がいらない』のほうが、インパクトがあるんでしょうか(笑)」(福田氏)

 いま、コンビニやスーパーでは、商品が登場し、消えていくサイクルが非常に早い。同時にネットによって情報過多の時代となっている。だからこそ、説明は「わかりやすく」「単純に」「興味を持ってもらえる内容を」――。今後はキンレイのように、コミュニケーションで一皮むけた企業が業績を伸ばしていく時代なのかもしれない。