今ある資源を
ビジネスに最大限に生かせ!

 現場を見て最初に気づいたのが、従業員のハートの熱さです。とにかく一生懸命で、「お客様のために」という気持ちが強い。震災発生時にスパリゾートハワイアンズにいた記者・清水一利さんが書いたルポ『フラガール3.11 つながる絆』には、避難しているお客様の不安を減らして無事に帰宅していただくことを最優先し、赤ちゃんのミルクやおむつといった必要なものをどんどん提供するなど、現場が自発的に動いた様子が描かれています。

 人間同士の絆が薄い都会と違って、従業員は無意識のうちに、親切で人間味ある接客をしている。仕事が終わってから飲みに行くことばかりを考えているような従業員に、ホスピタリティある接客を身に付けてもらうには、大変な教育コストがかかります(笑)。従業員が自然と持っている熱いハートは、この会社のコアコンピタンスだと実感しました。

 さらに、スパリゾートハワイアンズが50年間蓄積してきたものの大きさにも気がつきました。特にフラガールは、教育機関である常磐音楽舞踊学院のOGが300人強いて、時代ごとにさまざまなショーを行ってきました。彼女たちが磨き上げてきたショーのレベルは本当に高く、私も見るたびに心を打たれます。

 しかし、こうしたコアコンピタンスはあるのに、生かし切れていないと思いました。スパリゾートハワイアンズの社員は9割以上が地元・いわきの出身者です。ずっと地元で一緒に働いてきた従業員は、自分たちの強み・弱みを客観的に見ることが苦手です。来てくださったお客様を心からもてなすことはできるけど、新しいお客様を開拓したり、いまある資源を使ってさらに利益を出すといった発想が薄い。

 また、現場は勘に頼って動いていて、仕組み化・システム化が全くなされていない。経営を近代化し、戦略をもって資源を生かすことがこの会社の課題だと認識しました。

「やってみて、言って聞かせて……」じゃないですが、まずは私自身がアイデアを出していきました。フラガールのショーに映像を投影できるプロジェクションマッピングの機械を導入してダイナミックな演出にしたり、ゆるキャラ「CoCoネェさん」を作って関連商品を考えさせたり、当社が培ってきた資源をどう発展させていくかをみんなに考えてもらうきっかけを作っていきました。

 ショーのDVDを作ったのも、全国で売って利益を上げると同時に、フラダンスを習っているけれどもスパリゾートハワイアンズを知らない人がDVDを観て、来てくださるという販促効果もあるかもしれないと考えたからです。そういう発想でビジネスを作っていくという事例を、次々と示していきました。

 現場の人たちは「こういう風にやるのか」「面白い」と思い始めたようで、おとなしかった空気が変わってきました。ハワイの老舗アパレルブランド「イオラニ」と組んで商品開発をしたり、男性のファイヤーナイフダンサーのメンバーを増やしてアイドルグループのように売り出したり、新しいアイデアが現場から出てくるようになりました。

 持っている資源を最大限に使えば、ファッションや小物、遊び、ゲームにも展開していける。そういう仕事の仕方を、現場が少しずつ体得してくれているのではないかと思っています。お客様案内のIT化やロボットの導入など、やりたいことはまだまだあります。現場にはもっともっと頭を柔らかくして、早くついてきてほしいですね(笑)。