赤字路線にライバル空港、etc・・・。「JAL再生」民間企業だけでは乗り越えられない大きな壁
高コスト体質の元凶となったジャンボ機。再生計画で廃止になることが決まった。

 1月19日、会社更生法の適用を申請し、「企業再生支援機構」の支援下で経営の建て直しを進めることになったJAL・日本航空。

 再建計画では、従業員をグループ全体で1万5700人削減、子会社を来年3月までに53社削減、31の路線から撤退し、ジャンボ機もゼロにするなど、大規模なリストラ策が示された。そして、こうしたリストラを前提に、最大9000億円の公的資金が投入される計画だ。

 もし再建に失敗すれば、国民の大きな負担となる。JAL再建は本当に可能なのだろうか――。「追跡!AtoZ」取材班は、経営破たん直後のJAL社内を密着取材した。

「信用維持」が
JAL再生の大前提

 破たんから2日後の1月21日、旅客機の運行状況を確認しているJALのオペレーションコントロールセンターで、社員は世界41の空港で問題が起きていないか状況を見守っていた。

 JALは、破たん直後、世界各国にある文書を送っていた。各国の取引先に対し、日本政府が資金面など全面的にJALの経営を支援していくと書かれている。こうした文書を送ったのには、ワケがあった。かつて、海外の航空会社が経営破たんした際、飛行機を飛ばせなくなる事態に追い込まれたからだ。

 9年前に破綻したスイス航空の場合、燃料代が払えず2日間運行が停止になり、ロンドンでは航空機が差し押さえられた。信用不安が高まれば、海外で給油を拒否されたり、離着陸の許可を得られなかったりして、世界中の路線で運休してしまう。信用の維持が、JAL再生の大前提なのだ。

赤字路線にライバル空港、etc・・・。「JAL再生」民間企業だけでは乗り越えられない大きな壁
業務の効率化に取り組む整備士たち。コスト削減と安全確保を両立させるための模索が始まっている。

 整備部門では破たん後を見据え、業務の効率化の取り組みを急ピッチで進めている。800人の部下を抱える整備部門の中西悟(なかにしさとる)部長。備品置き場の位置を工夫し、短時間で作業をこなそうとしている。これまで整備部門は、安全確保最優先を理由にコスト削減になかなか手をつけてこなかったという。

 「安全性というと、お金をいくらかけてもいいという考えもあった。色んな勘違いをしていた部分を普通にしていく、それから支援を受けているのだから普通ではダメ。普通以上のものにする」

 コストの削減と安全の確保をどうすれば両立できるのか。社員の模索が始まっている。

地域のライフラインは
誰が守るのか?

 JAL再生のためにまず必要なのが、国内線で確実に収益を上げていくことだ。そのためにJALは、国内の赤字路線の撤退などを打ち出している。こうした動きが私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか、追跡した。

 再建計画では、国内線と国際線、あわせて新たに31路線から撤退する方針が打ち出された。元JAL社員は、赤字路線を存続させてきた背景には、政治家とのしがらみがあったと述懐する。

 「地元、国会議員、そして彼らの要請を受けての官庁の要請があった。断った場合の影響というのが計り知れない点があり、抗しきれなかった」