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「社内特区」の設定で
新事業への挑戦をはじめよう

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第57回】 2016年6月10日
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 イノベーション特区の考え方は、もともとは自治体などが産業振興や雇用創出を目指して、地域限定的な規制緩和や支援施策を行うものである。江戸時代の鎖国の際に設けられた長崎の出島になぞらえて「出島戦略」などという呼び方をする場合もある。イノベーション特区には、予算や各種社内プロセスに関して、例外的な対応や権限が与えられる(図2)

 既存企業にとって、社内のルールや組織を大きく変えることは容易ではない。従来の組織哲学や成熟している既存事業を破壊するリスクは誰しも負いたくないというが本音であろう。その一方で、デジタルビジネスによるイノベーションには期待している場合において、限定したビジネス領域や特定のプロジェクトに特別なルールを適用する、というのがイノベーション特区の考え方である。

 新興のベンチャー企業と伝統的な大企業では、企業風土や従業員のメンタリティが大きく異なることは否定できない。社内にベンチャー企業のような「出島」を設置することで、イノベーションへの障壁を取り払い、事業化のモチベーションを高めることも有効な打ち手となることを念頭に置くべきである。

IT部門に求められる対応

 さて、このようなビジネス創出への取り組みに対してIT部門はどのような役割を果たすべきなのであろうか。ITの専門家集団であるIT部門は、自らアイデアを起案し、ITを活用したビジネス創出を牽引することも考えられるだろう。一方で、ビジネスの最前線において顧客の課題やニーズをよく知る事業部門のスタッフが、ITやデジタル技術に対する感度を高めるための支援を提供することも重要な役割となろう。

 IoTや人工知能などの最新技術動向、同業他社や異業種の先進的なIT活用事例、デジタル技術によるビジネス革新や新業態創出に関する啓発的な内容などを、社内セミナーやイントラネットを通じて情報発信することで、イノベーションへの気づきを与えるというのも有効な打ち手となる。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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