社会・産業のデジタル化の潮流の中で、企業はこの波に乗り遅れたり、飲み込まれたりすることなく、ビジネス機会と捉えてイノベーションを創出していくことが求められている。そのためには、ビジネスとITをつなぐ人材と組織体制が求められる。
ビジネスとITを
いかに結び付けるか
デジタルイノベーションに向けた組織体制について考える前に、まずは、ITを活用したイノベーションに取り組む際のアプローチを整理しておこう。これまでは、ビジネス上の課題やニーズに対して、その解決策および実現策としてITを当てはめるという「課題解決型」のアプローチが主流であった。例えば、商品の納期や部品の調達のリードタイムを短縮したいという課題に対して、その解決策としてサプライチェーンの最適化を目指したデータ分析のソリューションを導入するというものだ。
また、新技術の台頭を受けてビジネスへの適用を検討する「シーズ提案型」の場合も考えられる。例えば、無線ICタグ(RFID)の低廉化という技術シーズを受けて、倉庫での資材の棚卸しへの活用を検討するといった取り組みが考えられる。これらのアプローチは、間違っているわけではないし、今後廃っていくというものでもない。
しかし、ビジネス環境の変化がこれまで以上に著しくなり、デジタル技術の進化と浸透がますます顕著となる時代においては、これらのアプローチに加えてビジネスとITのつながりを最初から前提としてイノベーションを創出するという考え方が必要となってくるだろう。
すなわち、ビジネスやITの環境変化や将来動向を予見して、それらを結び付けることで生み出される新規事業の創出やビジネスモデルの転換を実現するアイデアを創出するアプローチを意味する。イノベーションの創出においては、この「アイデア駆動型」が有効な場面が多いと考えられる(図1)。