岸見アドラー学に対する
強い支持
──韓国では数多くのメディア取材があり、サイン会や講演会には多数の読者が詰めかけました。お二人がスター化しているとさえ言える状況ですが、こうした熱狂ぶりをどう分析していますか。
古賀 僕からすると、読者の皆さんのお目当ては岸見先生という感じだったので気は楽でした(笑)。僕は「岸見アドラー学」を確立してほしいと常々思っているんですが、日本より先に韓国でそれが実現しつつあるように感じます。『嫌われる勇気』という本にあるのは、岸見一郎という哲学者から語られるアドラー学なのだということを、韓国の読者のほうが強く感じているのかもしれません。
岸見 たしかに日本とはちょっと違いますね。熱狂的に受け入れられた感じです。個人的な話で言うと、この1年間韓国語を勉強していましたので、その点はすごく好意的に受け止めてもらえたと思っています。民間交流のレベルでは貢献できているかなと。うまく言えないですが、スターとかではなく、もっと近くて親しい存在に思われている気がします。
──たしかにサイン会に来た人がみな笑顔で親しげに話しかけてきました。遠い存在ではなく、近しいけれど素敵な考えを教えてくれた人という感じなのでしょう。
岸見 サイン会に来られた大柄で強面の方に挨拶をしたら、急にニコッとなったり。ああいうのは嬉しいですね。
──さて、新刊の『幸せになる勇気』が韓国でどのように受け入れられることを期待されていますか。
古賀 『幸せになる勇気』はタイトルだけ見ると優しく感じるかもしれません。ですが、実践する段になると『嫌われる勇気』より厳しいことを言っています。本当に自分を変えなきゃいけないという選択を迫る本ですから。なので、韓国でどう受け入れられるかはまったくわかりません。前作が“建国以来初”といった記録をいろいろつくっただけに、反発する人も当然いて、公平に見てもらいにくいとも言えるでしょう。ただ、韓国の皆さんが出版をすごく待っていてくれたことは、サイン会や講演会で読者の人たちと直接触れ合ったとき本当に強く感じました。そのことだけは信じてもいいのかなと。疑り深い僕が言うのもなんですけど(笑)。
岸見 訪韓は出版されてすぐだったので、メディアの人以外にはほとんど読まれていませんでした。しかも韓国語版の書名は『嫌われる勇気2』なんですよね。だから読者の皆さんが内容をどう評価するかはわかりません。でも、自分としては前作以上の本だと思っています。この手応えを真正面から受け止めてくれた人が、前作以上に他の人に勧めてくださることを期待しています。
また、韓国にはクリスチャンが多いですよね。『幸せになる勇気』の特に第五部には、キリスト教で言う隣人愛と近い考えが出てきます。となれば、宗教的ベースが希薄な日本人とは異なる受け止め方が出てくるかもしれませんね。