2021年に開催された東京五輪。当時『週刊文春』記者だった甚野博則氏は五輪選手村にアルバイトとして潜入していた。文字通り血を流しながら重労働をこなし、若者からの冷たい視線を耐えしのぶ――。ジャーナリスト・横田増生氏も著書『潜入取材、全手法』にて「潜入先では一生懸命働く」という原則を説く。取材先での“やる気”は、なぜそこまで重要なのか。2人の対談からひも解いていく。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局 工藤佳子)

スクープ記者が「五輪選手村バイト」に潜入! 流血しながら働くも、冷たい視線を浴び…潜入取材の裏事情Photo: Adobe Stock

清掃バイトに落ちる
『週刊文春』のエース記者

横田増生(以下、横田):甚野さんは『週刊文春』の記者だった時代、東京五輪の選手村にアルバイトとして潜入していましたね。

甚野博則(以下、甚野):2021年の東京五輪では選手村にアルバイトとして潜入して記事を書きました。この時も本名でちゃんと働きましたね。もちろん『週刊文春』の記者だとは言ってませんけど。

 他の取材もしながら働いていたので、選手村でのアルバイトが終わってヘトヘトで会場から出たら編集部から着信がいっぱい入っていて、「悪いけど、どこどこに行って張り込み取材を手伝ってくれ」って言われてそのまま張り込み取材に行くなど、体力面でも大変でした。

――アルバイトに応募する時は履歴書などを求められたのでしょうか。

甚野:もちろん履歴書のようなものを提出しました。2社受けたのですが、どちらもマスコミ業界に入る前の会社の履歴まではちゃんと書きました。そこからは、だいぶ省略する形で「自由業」とか書いていたと思います。

 最初はトイレ清掃とか、路面清掃とかのバイトに申し込んだんです。面接会場に行くと3対1の集団面接で、年配の方が多い印象でした。一緒に面接を受けた人もおそらく僕より年上の方だったんですが、「週にどれぐらい来れますか」って聞かれても「週2、3回だったらいけます」とかそんな感じでした。僕は取材なので、「毎日行けます!」みたいな。48歳と若いほうでもあったので「これは受かったな」と思いました。

横田:週2、3回しか出勤できないライバルはダメそうですね。

甚野でも、面接に落ちたんですよ。なんで落ちたかは言われないんですけど、すごいショックで。トイレ掃除でもなんでもやってやろうと思ったのに、駄目だって言われて。

 僕の何が駄目だったんだろうっていうのが、最後まで分からなかったんですけど。今思うと逆に怪しかったのかな、やる気がみなぎっている感じが(笑)。

横田:僕もビックロの面接に行く前に、ユニクロの東京本部も入ってる東京ミッドタウン店の面接を受けました。そこ面白いじゃないですか、柳井正氏の下で働いてるわけだから。でも、面接に行ったら募集が出てるはずなのに「今募集はしていません」とか言われてはじかれました。

 ちょっとへこみますよね、「なんでやねん」みたいな。こんなやる気のある労働者、どうしてはじくかなって。