経営学者の入山章栄氏(早稲田大学ビジネススクール准教授)と、1000人以上のトップリーダーを取材してきた藤沢久美氏による対談。
世界のリーダーたちとの直接対話から導いた藤沢氏のリーダー論『最高のリーダーは何もしない』を、入山氏は研究者としてどう読んだのか?
前編に引き続きスペシャル対談の後編をお届けする!!
(構成/高橋晴美 撮影/宇佐見利明)
▼ここまでの対談▼
経営学的にも「何もしないリーダー」がベスト?
入山章栄×藤沢久美 特別対談【前編】
https://diamond.jp/articles/-/93553
ビジョンを伝える、現場で伝える
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。
同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年から現職。「Strategic Management Journal」「Journal of International Business Studies」など国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。
著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)がある。
【入山章栄(以下、入山)】『最高のリーダーは何もしない』を読んで思ったことですが、日本電産の永守重信さんのリーダーシップも、この本の内容に通じるところがありますよね。永守さんはある意味、トップダウンで伝えていくタイプの方ですが、とてもビジョナリーだし、現場に行くこともすごく大事にしている。健康第一ということでお酒の付き合いはしないけれど、普通の従業員たちとランチを食べるようにしているそうです。
【藤沢久美(以下、藤沢)】優秀な経営者は、現場に答えがあるのを忘れないですよね。
【入山】ええ。そして、優れたトップリーダーの共通項は、ビジョナリーであると同時に、コミュニケーションがとっても上手いということだと思います。いい経営者はやっぱり話がうまいなあと。
【藤沢】賛成です。あるいは、いわゆる「おしゃべり上手」じゃないにしても、人と向き合って何かを伝える能力が高いなと感じることが多いです。
【入山】そう、目を見て話す。いいビジョンということが前提条件ですが、いかにビジョンをコミュニケートするかというのは、経営学の世界でも重視されているところです。
【藤沢】たしかに、どんなに立派なビジョンを掲げていても、トップが現場に行かない会社はなかなかうまくいっていなくて……。トップが役員たちに伝えて、役員が管理職に伝えて…という伝言ゲーム形式だと、どうしても魂が十分に伝わらない。理想的なのは、やはりそのビジョンを掲げている経営者自身が、現場に行って社員に語るということですね。
【入山】本当にそう思います。