創業117年の歴史を持つロート製薬の山田邦雄氏(代表取締役会長兼CEO)と、1000人以上のトップリーダーを取材し、最新刊『最高のリーダーは何もしない』が早くも4万部突破と好調な藤沢久美氏による対談。
社員の自由な「挑戦」を推奨する山田氏は「失敗」についてどう考えているのか? また、挑戦を下支えする「粘り強さ」についての、独自の考え方とは? 自律的に動く組織をつくるためのリーダーシップ対談、いよいよ最終回!
(撮影/宇佐見利明 構成/高橋晴美 聞き手/藤田悠)
難しいから「やる意味」がある
【藤沢久美(以下、藤沢)】ロート製薬さんといえば「メンソレータム」も有名です。1975年にメンソレータム社の商標使用専用権を取得、88年にメンソレータム社を買収されましたね。時代、時代で必要なものを着々と揃えられてきたという印象を受けます。
1956年、大阪府生まれ。東京大学理学部卒業。慶應ビジネススクールMBA(経営学修士)取得。
1980年、ロート製薬に入社。営業職、マーケティングを経て、1991年、取締役就任。1992年に専務、1996年に副社長、1999年に社長を経て、2009年6月から現職。
オープンオフィス、役職ではなく「~さん」という呼称など、ロート製薬の社内風土改革を行う。現在も会社の事業を超えて、新たな社会貢献の取り組みに力を入れる。
【山田邦雄(以下、山田)】それが海外進出の足掛かりになりました。そういう意味ではラッキーというか、なんというか、「やれ!」という風が吹いてきたように思います。
【藤沢】山田さんが先頭に立って戦略をつくって「次はこれだ!」みたいな感じではないのですね。
【山田】そうですね。うちの会社は「売上倍増!」とか、そういうガツガツ感はないですね。もう少しガツガツしてもいいかなと思うときもありますが(笑)。
【藤沢】前回、経営理念として「7つの宣誓」について伺った際にも言及されましたが、新CI(コーポレート・アイデンティティ)として、「NEVER SAY NEVER」という言葉を掲げていらっしゃいますね。社史の冒頭にも、「難しいからやる意味がある」とありました。これだけを見ると、「なんだか大変そうな会社だ」という印象を持ちそうになりますが……。
【山田】「NEVER SAY NEVER」はロートに流れるDNAを表す言葉です。「人がやらないことをやる」という挑戦心、「難しいからこそあえてやる」という精神で、ロートの歴史はつくられてきた。「それをこれからも続けていきましょうね」ということです。
【藤沢】一方で、御社では「こうしなさい、ああしなさい」という押し付けがなくて、自由な雰囲気の中で、ゆるやかにいろんなものが生まれているという印象を受けます。大ヒットしているスキンケア商品の「肌ラボ」も、入社1年目の社員さんが企画したのだとか……。これは風通しのいい組織だからこその成功事例だと思います。
【山田】ええ、基本的には、ゆるーくやっていますね。
【藤沢】ゆるーいけれど、社員の方々が羽目を外さないのは、なぜですか?
【山田】うちはもともとが製薬会社ですから、薬事法をはじめとして、何重にも管理されたシステムの中で仕事をしている。だから本来は、どうしてもおカタい会社になりがちなんですよ。だからこそ逆に、僕としては「肩の力を抜いて柔軟に行こう!」と呼びかけることをかなり意識しています。それでもやっぱり、根が真面目な人がうちの社員には多いですね。