クラウド導入の事例が増えるにつれて、より実践的なテーマがクローズアップされている。その一つがオンプレミスとクラウドの連携。クラウドからオンプレミスへの再移行やそれらの統合管理は容易にできるだろうか。マイクロソフトはこうした観点を重視しながら、SaaSとPaaSの分野でビジネスに貢献するクラウド・サービスを拡充している。(この記事の内容は、6月30日に開かれた「クラウド・コンピューティング戦略セミナー Part1~成功するクラウド導入のポイント~」で講演されたものです)

オンプレミスに戻れるのか
IT環境全体の統合管理

「クラウドの波は、来るのか来ないのか。その種の議論をしている段階は終わりました。いま問われているのは、どのように上手にクラウドの波に乗るのかということです」と語るのは、マイクロソフト テクニカルソリューションエバンジェリストの西脇資哲氏である。そして、「それはユーザー企業、ITベンダーの両方に言えることです」と続ける。

マイクロソフト テクニカルソリューション エバンジェリスト 西脇資哲氏

 いま、同様の認識を持つ多くの企業が、クラウドへの傾斜を強めている。その導入事例も増えつつあるなかで、ユーザー企業がクラウドを検討する姿勢はより実践的なものになっているようだ。

「クラウドの選定に際して、ユーザーが価格を重視するのは当然でしょう。くわえて、最近はオンプレミスへの再移行の容易さ、オンプレミスとクラウドの両方を統合的に管理できるかどうかという観点が注目されるようになりました」

 実際にクラウドに移行した後で、「ウチには合わない」と気づくこともあるだろう。その時に、余計な費用をかけずにオンプレミスに戻れることが重要だ。また、クラウドとオンプレミスの管理が別々であったり、開発手法や操作方法が別々であったりすると、従来とは別にコストをかけることになり、これでは、全体でコストを下げることは難しくなるだろう。

 このような観点も重視しながら、マイクロソフトはクラウド事業を展開している。

オンプレミスとクラウドの
シームレスな統合環境

 実は、マイクロソフトはオンライン・サービスの長い歴史を持っている。古くは「Windows Live」や「msn」などのサービスがあり、この分野で15年以上の経験を積んできた。その間に、同社はさまざまなノウハウを蓄積してきたと西脇氏は言う。

「インターネットの世界には、凄まじいほどの脅威が存在します。私たちは長年の経験のなかで、セキュリティ対策のさまざまな手法を磨いてきました。同時に、データセンターの運用ノウハウも高めてきました」

 その運用ノウハウが、マイクロソフト独自のSLAを支えている。契約のレベルに満たなかった場合には、返金を約束しているサービスもある。それほど、データセンターの運用に自信があるということだ。