「行政マンというよりは、1人の人間として、多様な人と接していくとき、円滑に物事を進めていきたいというやり方を研究してきました。自分が勉強したことは、実際に役場にいたポジションで町民の方と対話するときに、生かすようにしています」

 対話の場を生み出していくと、予期できないことが起こる。その予期できないものを進行役であるファシリテーターとして生み出せたときには、これほどの喜びはないという。

「誰のためにやっているわけではないけど、自分がいたことによって、目の前の人たちがパッと日が射したような感じに変わったとき、ファシリテーターとしてやったと思える瞬間だと思います」

 現在は、県の市町村職員研修所で、ファシリテーション会議の進め方の講師も務めている。

元駐在所の居場所「ピアハウス」には
“ルール”が存在しない

ピアハウスにはあえて“ルール”を作らなかった、と伊藤さんは語る

 永嶋さんは、昨年「ひきこもり大学」という当事者発のワークショップを県内で開いた際、伊藤課長がファシリテーターを務めることになった当事者たちに勉強会を開催してくれたのがきっかけで、伊藤課長と出会った。

 そんなときに、西条駐在所が昨年3月末付けで移転することになった。

 それに伴って、空きスペースを地域の見守りにしている人たちの立ち寄り所である「交通安全ステーション」として使うとともに、警察官の家族が居住できる家の空間をどうしようかと考えていたとき、「やまなしピアカフェ」の永嶋さんにつながっていく。

 元々、空き交番や駐在所を地域の人たちの居場所機能として有効活用したいという発想は、町長や副町長の考えでもあったという。

 ピアハウスは、“みんなの家”という願いが込められている。そのネーミングも、伊藤課長が名付けた。

「やまなしピアカフェと連動したいという思いがあったことと、施設ではなく、みんなが立ち寄れる家でありたい。何よりも、相談業務を行うところではなく、仲間がいるところという意味から、ピア、ハウス、しょうわと、自然につながっていったのです」(伊藤課長)

 実際、永嶋さんは、みんなの集まれる家にするために、ルールをつくっていない。もめ事も起こるため、ファシリテーションが必要になるという。