地方紙の果たす役割は、ますます重要になりつつある。

 “ひきこもり対策後進県”といわれてきた山梨県は、わずか1年で“ひきこもり対策先進県”へと変貌しようとしている。

 その背景にあるのが、山梨県で圧倒的な新聞購読率を誇る「山梨日日新聞」の存在だ。

 同紙を発行する山梨日日新聞社は、2014年8月から「ひきこもり」を題材にした連載「山梨発 ひきこもりを考える~扉の向こうへ」をスタートさせた。

 この間、引きこもり界隈の取材を長年続けてきた筆者も目を見張るほど、地域に埋もれていた数多くの当事者や家族が出てきて、多様な人たちとの関係性をつくりだし、仲間たちとのコミュニティ活動も同時多発的に動き出すなど、地域の活性化につながる様々な波及効果をもたらした。

1年弱で約130本の記事を出稿
読者からは終了を惜しむ声も

山梨日日新聞「扉の向こうへ」取材班の記事をまとめた冊子。出版を望む声も
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「扉の向こうへ」取材班は、そんな1年近くにわたる連載記事をこのほど冊子にまとめた(写真1)。

 冊子をめくっていると、様々なことが思い出されてきて感慨深いものがある。

 取材班による最初の記事は、2014年8月1日付け<「山梨親の会」設立へ、16日に講演会へ>。

 1年ほど前、筆者も、ひきこもり家族会の全国組織「全国ひきこもりKHJ家族会連合会」の池田佳世代表から、山梨で家族会の支部をつくるので、一緒に講演してほしいと依頼された。

 会場の県立図書館や筆者らの日程の都合で、たまたま調整できたのが、8月16日。「お盆だから人が来ないのではないか」などと、池田代表は心配していたものの、実際には100人以上の家族や当事者らが参加して、椅子を追加で運び入れるほど盛況だった。この講演会が、第一歩だった。

 最初に取材班の記者に会ったのは、2014年6月。東京で「庵」(ひきこもりフューチャーセッション)が開催される前に待ち合わせて、取材を受けた。