つまり今流行っているオタクカルチャーというのはすべて、誕生したあとにさまざまな大きな要因が重なってそうなってるわけですから、それをまた再現しようとか、新たにつくっていこうというのは無理ですわな。

 一方で、いったんできてしまえば、もう僕らの勝ちです。

 アニメやゲームやフィギュアっていうのは、世界に誇れる日本独自の、そして唯一、現在進行形の文化ですからね。どう考えても僕らが世界一であることは間違いないわけですよ。

 これからも、負けることは絶対にないです。フィギュアをつくる文化の発信というのは、日本しかでけへんもんやと思いますな。

──それは技術力の問題ということですか?

 技術じゃないです。日本には、マンガがありアニメがあり、手塚治虫から始まって宮崎駿があり、プラモデルでもタミヤがありバンダイがありといった、さまざまな歴史がある。その50年間を真似しようとしてもどこもできないということです。

 そういう意味では、僕らのやっていることというのは、胸を張れるものであると思うんですけどもね。不思議がられたり不気味がられたりもしますけども、西洋では文化の発信者としては、最高位の評価をしてもらえてますから。

 この11日から15日までパリに行ってくるんですが(※インタビューは9月7日)、なんとベルサイユ宮殿で大統領主催のパーティがありまして。ベルサイユ宮殿で「村上隆(※注8)展」があるんですよ。そのオープニングのパーティで、村上さんとは、彼のフィギュアのプロジェクトで同志として十数年一緒にやってますから、顔だけ出してくださいということで。

 別に僕らがアーティストであろうとかアートをやろうとかそんなことは思ってもいないんですが、まあフィギュアというものはいまや、ベルサイユ宮殿の中で飾られるほどになった、と。

 海洋堂も、なんかの間違いでお菓子のオマケというヒットがあって、それなりにお金も稼げてビルも建った。認知度も得て、秋葉原を中心にいろんな店がウチの商品を扱ってくれる、メーカーみたいなかたちにもなれた。

 ただ、そういうなかでほかのフィギュアメーカーとも違うのは、事業欲は全然ないんです。営業部署はないんですよ。僕らはあくまで「造形集団」なので、店も人も増やしたくもないし会社として大きくもしたくない。

(※注8)村上隆:現代美術家。マンガやアニメなど日本のオタク文化の文法をアートの世界に持ち込み、特に海外で高い評価を得ている。97年、等身大美少女フィギュア作品「Project Ko2」の制作にあたり海洋堂に協力を依頼。なお同作品はオークションで約5800万円の値を付け、また製作を担当した海洋堂の造形作家、ボーメ氏の美少女フィギュア商品が、その後“アート”として海外美術界から注目を浴びることになった。