日本人に対してフィギュアというものをなんとか知らしめたい、認知してもらいたいというのが、海洋堂のスタイルなんです。自分たち自身が、フィギュアの伝道師になっているわけです。

 80年代前半にガレージキットを始めたとき、大人向けの、リアルなマンガのキャラクターをつくるような文化はなかったんですよ。そういう状況に不満を持って、自分らでつくりだそうというのが、ガレージキットだった。

 塗装済み完成品のフィギュアも今では当たり前やけども、日本では僕らが始めたアクションフィギュアまではリアルなものはなかった。お菓子のオマケに色が付いてリアルなものなんて、それこそチョコエッグができる前までは世界になかった。それを僕らが始めて、色は中国で1個1個手で塗ってますよとか、全部種を明かした。

 そういうところから、いい大人が、真剣にキャラクターものを楽しめるようになった。「ちったぁ感謝せいやー」と思いたい部分もあります。

新たなフロンティアを模索中

──秋葉原の現状は、どう見ていますか。

 フィギュアにしろマンガにしろゲームにしろね、これだけいいものがなんのストレスもなく手軽に買える街というのは、今の人たちにとっては、パラダイスなんでしょうなぁ。皆さん幸せに、楽しそうにね、買い物してウロウロしてる。

 “濃い”人を見に来る“軽い”人も出てくるし、海外からもたくさんの人が来ている。
ここまで完全に特殊化してしまうと、もう一人勝ちじゃないですが、ほかではこんな街は生まれもようもない。

 ただ、僕にとっては秋葉原というのは、特別なものでもなくなってきてるんです。

 どんどんオタクが“薄く”なってしまってますね。観光地的なるものというか、そんな薄い人がいっぱいいる場所には、濃い人は逆に居づらくなりますから、本物のオタクが持っていた、いいものをつくりだそうという力は、だんだん枯れてくるんでしょうね。

 以前とは、「オタク」という言葉の意味自体が違ってきましたからね。

 映画でもフィギュアでもマンガ作品でもなんでもそうですけど、真剣に「これの何がええのやろ」と自問自答しながら、自分が気に入ったものを評価して買うというのが、そもそものオタクの正しい姿やったはずなんです。それが最近はもう、マンガのキャラが好きやったらオタクとか、ちょっとガンダム好きやったらオタクとか、そういうふうになってきてしまっているので。