ひらめき写真はイメージです Photo:PIXTA

「言葉を紡ぐことは思考を紡ぎ、行動を紡ぎ、習慣を紡ぎ、人格を紡ぎ、運命を紡ぐ」と語るのは、コピーライターとして数々の賞を受賞した堤藤成氏だ。うまいことを言おうとしないからこそ、「心に響く」ことに気づかせてくれたのは、大学生のときに読んだ一通の手紙だった。本稿は、堤 藤成『ハッとする言葉の紡ぎ方 コピーライターが教える31の理論』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。

父からの「元気ですか」が
もたらした“気づき”とは

 僕が大学生として福岡の実家を出て京都で学生生活をしていた頃、大工の父から手紙が届きました。あまり父は筆まめなタイプではなかったので、その突然の手紙はとても印象に残っています。今回、実家で荷物を整理していると、その手紙が出てきました。

 藤成君元気ですか

 寒さがきびしくなってきたんで風邪をひかぬように気をつけて

 うがいが一番いい予防だぞ

 京都に行ってからもう一年近くになったなあ

 大学の生活も慣れてきたかな

 去年はお父さんも忙しいときだった。(中略)

 今お父さんの親せきの家を(建てる仕事を)させてもらっている。

 毎日のように何かをもらってくる 野菜とかイチゴなど食べきれないくらい

 テーブルの上にドサっとあるぞ。

 藤成がいるなら ペロっと食べてしまうけど。

 こんな時に藤成がいれば~と会話に出てくる。

 食物=藤成だ

 野菜果物はちゃんと食べているか

 冬はうどんのような暖かい汁ものが体もぬくもるし、いいぞ。

 これから冬の雪も多くなると思うから

 自転車通学、用心しろよ。

 僕は当時、家賃1万8000円のボロボロの家に住んでいました。そこに福岡の旬の野菜などといっしょに、こんな手紙が届きました。