2008年9月のリーマン・ショックから丸2年がたった。この倒産劇が、世界金融・経済危機の引き金となったことは、まだ記憶に生々しい。この9月12日には、バーゼル銀行監督委員会(BIS)が新たな「自己資本規制案」を発表した。この2年の間、金融・経済危機の再発を防ぐために、世界の金融当局の間で、さまざまな議論が行われ、それがいま新たな形となって姿を現しつつある。
金融危機の原因は、複雑多岐にわたったために、新たな金融規制もまた複雑なうえ、技術的な側面も強く、非常に分かりにくい。だが、金融規制改革は、銀行をはじめとする金融機関の経営のみならず、経済全体へも大きな影響を及ぼす。また、いまの規制改革論議は、「国際的に活動する巨大金融機関の話」とばかりも言っていられない。こうした規制が一つの基準となれば、地方銀行など国内だけで活動している銀行にも、市場の評価を通じて影響を及ぼしかねないからだ。
そこでここでは、上下2回にわたって、金融規制改革の狙いと内容をできるだけやさしく説き明かしてみたい。
金融危機を引き起こした
3つの主要な要因
今回は金融危機の原因と、なぜ金融規制がこれほど複雑になってきたのか、その背景について考える。改めて、危機の原因を押さえておくことで、規制の意味が理解しやすくなるからだ。
金融危機の要因については、さまざまな分類がなされているが、ここでは次の3つに大別してみよう。根底にはバブルを引き起こしたマクロ経済の状況があり、その上に金融監督の問題、個別金融機関の経営問題が乗るという3層構造をなしており、住宅バブル崩壊を引き金に、その問題点が相互作用を及ぼしながら、一気に噴き出たと考えると理解しやすい。
まず第1のマクロ経済要因。言わずと知れた経常収支の不均衡問題である。アメリカが実力以上の消費を行い、世界中からどんどん輸入しまくった。おかげで、世界経済は好調を続けたものの、アメリカ1国だけが、大幅な経常赤字を出すという状況が出現した。