橋下徹・大阪府知事が、「ぼったくりバー」という極めて下品かつ的確な例えをもって糾弾したので、「国の直轄事業と地方分担金」という普通の人々には馴染みもなく、ややこしい問題の本質が露になった。
要は、明細なき不明朗会計、という指弾である。
例えば、大阪府に費用100億円をかける道路建設の「国の直轄事業」があるとする。後で詳述するが、地方自治体の負担金は3分の1だから、33億円である。それが、現在の制度では何の明細書も添付されずに、国から大阪府に金額だけ書かれた請求書がいきなり届くのである。当然、33億円の使途はまるでわからない。要求額が適切なのかどうかも判断できない。だから、「ぼったくりバー」の請求書なのである。
さて、やむなく地方自治体が独自に会計検査院の調査結果などを遣って調べてみると、その33億円が全額道路建設に投下されたのではないことがわかる。一部が国交省地方整備局職員――つまり、国家公務員――宿舎建設費、給与、退職金、はてはリクライニングシートにまで化けていたのであった。注文していない品にもおカネを支払わされているところも、やはり、「ぼったくりバー」なのである。
なぜこんなことになるのか。順を追って説明しよう。
地方の大型公共事業には、二種類ある。「国の直轄事業」と「国の補助事業」である。要するに決定権者の違いであり、前者は国(国土交通省)が案件実施を決める。後者は、地方自治体が決める。もう少し説明すれば、「国の直轄事業」は国が事業を企画し、事業資金の3分の2を負担する。したがって、地方自治体の負担は3分の1、事業が完成した後の維持費は2分の1持たなければならない。一方、「国の補助事業」は、地方自治体が事業主体であり、事業費の二分の一以上を負担する。残りは、国の補助金である。
そもそも、国の直轄事業なのに、その費用の一部をなぜ地方が負担しなければならないか。
かって高度成長期のインフラ整備は、高速道路も港湾設備も橋もダムも、日本国中に経済効果をもたらし、国の“直轄“事業の名に値するものだった。そうした全国的プロジェクトが徐々に減り、例えて言えば、新幹線投資が整備新幹線投資に移り変わるようになると、その経済的恩恵は特定の地域に限定されるようになった。となれば、受益者である地域の負担が増しても当然である。こうして、国の直轄事業でありながら、地方自治体が一定費用を負担する仕組みが広まったのである。