税金滞納の累計は
合わせて1兆円ナリ

――国税徴収官も脱税者の刑事告発を行うのですか。

中島 お金はあるのにそれを隠して納税しない悪質なケースについて、隠したお金を探し出し、税金を納めさせることが徴収部門の責務であり、応じない場合は財産の差し押さえを行います。

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 ただし、あくまでも財産調査であり、マルサの捜索が最終的には容疑者を脱税で刑事告発することが目的であるのとは異なります。

 これについて、私には苦い思い出があります。調査の過程で、顧問税理士が滞納者に財産をどこかに動かすよう指示したFAXを見つけたのですが、このFAXには財産としての価値がないため、差し押さえることができなかったのです。

 財産を隠している証拠としては十分なのですが、徴収官の権限は「財産の差し押さえ」ですから、当人の了解を得てコピーを取るか、現物を借り受けるしかありません。もちろん、自分が財産を隠している証拠を「はい、どうぞ」と差し出す人はいませんからね。

――滞納の件数はそんなに多いのですか。

中島 年間で、徴収決定済み額のおよそ2%弱が滞納という実態があります。累積案件を合わせると1兆円超にもなります。金額の多寡こそあれ、滞納件数は相当数に上るので、処理には相応の人員数が必要です。
※参考:「平成26年度租税滞納状況について」(国税庁)

 東京国税局管内では、現在、約6000億円が滞納のままで、これは全国の滞納額の60%に相当します。つまり、東京国税局が実績を上げないと、全国レベルでの滞納金額は減らないのです。

――国税局の徴収部門の手に掛かれば滞納分はほぼ回収されるそうですが、その理由は。

中島 国税局の徴収案件は、会計検査院が後で中身をチェックします。なので、事案に取り掛かったら徹底して行います。

 最終的に徴収できないとなると、「滞納処分の執行停止」という選択肢もあるのですが、執行停止の判断に至るまでが大変で、あらゆる手を尽くした経緯を説明する必要があります。滞納者本人がお金を持っていなくても、第二次納税義務(注1)についても十分に検討します。

 納めてもらうはずの税金ですから、それを徴収するのは当然なのですが、滞納整理は慎重、かつ根気強くやっていきます。長いものだと十数年を要することもあります。

――捜索は何人で行うのですか。

中島 税務署が捜索を行う時は、通常、単独、あるいは2人程度です。国税局の場合は、取引銀行なども全て調べますので、少なくとも20~30人。多い時だと70~80人になります。

 私が徴収部次長の時は、40人規模の事案を年間5~6件担当していました。一気に捜索しないと、債権などはどこかに移されてしまいます。昔は動産を差し押さえたりしていましたが、最近はほとんどが債権がらみです。

 

注1:第二次納税義務  納税義務者が、滞納および滞納額を全額納めることができない時、その納税義務者と一定の関係にある第三者に、二次的にその納税義務を負わせるもの