弾道ミサイル原潜の待機海面として
米国にとって南シナ海は極めて重要

 米国は経済関係が極めて重要な中国に対し、Containment(封じ込め)を狙わずEngagement(抱き込み)を目指すことを基本戦略にしているが、同時に将来万が一の対決を視野に入れ、米海軍は中国の弾道ミサイル原潜を撃破する能力を保持しようとしている。

 沖縄の嘉手納基地から発進する対潜哨戒機P3Cや新型のP8A、電子偵察機EP3Eなどによる南シナ海の監視を行い、海洋調査船による水中の音波伝播状況のデータ収集も行っている。

 対潜水艦作戦ではパッシブ・ソナー(聴音機)で潜水艦の出す音を捉えるのが基本だが、水温や水深、潮流、海底地形などで音の伝わり方は変わるから、日頃精密な調査をしておく必要がある。

 また潜水艦を識別するため、個々の艦が出す音を収録し「音紋」としてデータ化しておくことも行われる。それには米国潜水艦が相手の基地近くに潜入し、個々の艦の出港を確認しつつ録音するようだ。

 中国側にとってはこれは当然不愉快だから公海上や、その上空でも米側の情報収集活動を妨害しようとし、中国戦闘機が哨戒機に接近して威嚇したり、海洋調査船を中国艦船が取り囲んで進めなくするなどのトラブルが起きている。

 2001年4月には海南島の東南約110kmの公海上で、米海軍の電子偵察機EP3Eが中国海軍航空隊のF8II戦闘機と空中衝突し、戦闘機が墜落し操縦士が死亡、偵察機は海南島の中国基地に緊急着陸する事件も起きた。

 中国の「晋型」原潜に積む「巨浪2型」弾道ミサイルは開発が難航し、まだ搭載されていない様子だし、最大射程は8000kmとされるから南シナ海から発射しても米本土に届かず、米国東岸を狙うにはアリューシアン列島付近まで進出する必要がある。

 だが中国は直接米本土に届く「巨浪3型」ミサイルを開発中と見られ、そうなれば弾道ミサイル原潜の待機海面として南シナ海は戦略上極めて重要となる。

 米国はアラスカ沖に弾道ミサイル原潜を待機させているが、ロシアは制海権を取れないから、守りやすいオホーツク海と白海(スカンジナビア半島の北)に隠していた。中国も南シナ海をそれと同様にしたいのだろう。