4つの基本原則に立った「原則立脚型交渉術」
「原則立脚型交渉術」は次の4つの原則からなっています。
第1の原則 人と問題を分離する
立場を主張し合うと、その立場とエゴが一体化して、交渉が一層もつれてしまうことがあります。ですから、交渉に入る前に人を問題から解き放ち、両者を分離して考えることが大事になります。つまり、交渉の参加者は、お互いが敵味方に分かれて攻めるのではなく、一緒に問題を攻めるという見方ができるようにすることなのです。
第2の原則 立場ではなく利害に焦点を合わせる
交渉の場に入ったら、お互いの立場はいったん忘れてしまいましょう。大事なのは、本当は何を欲しているのかです。そこに焦点を合わせるということを忘れてはいけません。
第3の原則 行動について決定する前に多くの可能性を考え出す
正しい解決策は1つしかないと思うのではなく、双方に有利な選択肢を考え出すことです。
第4の原則 結果はあくまでも客観的基準によるべきことを強調する
どちらか一方が選び出した基準で決定されるのでは不公正さが残ります。あくまでも市場、専門家の意見、慣習、法律といった公平な基準によって結論を出すことです。
ビジネスでもプライベートでもよくある交渉事
交渉はゼロサムゲームだと思いがちです。交渉を相手との奪い合いと考えると結局うまくいかないし、時間もかかります。たとえば、ある姉妹が一個のオレンジをめぐって喧嘩しているとしましょう。普通に考えると半分に分けて双方に与えれば解決するだろうと思うかもしれません。しかし、それでは双方の利害が一致しないことで、よけいにもめてしまうことがあります。
「姉のほうが多くをもらう権利がある」
「いやいや、お姉さんだからといってそんな権利はない」
と、どちらも譲りません。
原則立脚型交渉術によると、まずは人と問題を分離させます。次に双方の利害に焦点を合わせます。この姉妹が本当に欲しているものは何でしょうか?それを聞いてみると意外なことがわかりました。
姉はオレンジの中身が欲しかった、妹はケーキを作るために皮が欲しかったのです。冷静にお互いの利害を調べてみたことで、喧嘩は難なく解決したのです。こういうことは普通の交渉でもよくあることなのです。
このケースでは当事者が異なるものを望んでいたことが合意成立の糸口になりました。一般に両当事者間の相違が問題を発生させるものと思われていますが、実際は相違が解決へ導くこともあるのです。