文章が伝わらない原因はどこにあるのでしょうか。読み手にとって、もっともわかりやすい表現は、ピラミッドストラクチャーから学ぶことができます。「個人向け事業から撤退するべきだ」というテーマを例に、考えていきましょう。
思考法から発想術、文章術、読書術、プレゼン術、図解術、交渉術、成功哲学まで、本当に使える仕事術を1冊に凝縮した新刊『ビジネススキル大全――2時間で学ぶ「成果を生み出す」全技術』より抜粋し、紹介していきます。
自分の書いた文章が相手に伝わらないもどかしさ
自分の文章が伝わらないと感じたことはないでしょうか。上司から「君の文章は何が言いたいのかチンプンカンプンだ」とか、「もっと簡潔にわかりやすく書きなさい」などと叱責を受けた経験があるかもしれません。
私はもともと文章が好きで、本をたくさん読んできました。自分でも日記や読書感想文などの文章を書いていました。ですから、文章はお手の物だと思っていました。
しかし、ビジネスの文章は別物でした。職場では、レポートや企画書、提案書、報告書など、日記や小説などとはまったく違う文章を書きます。会社員だったころには、自分の書く文章が周囲に伝わっていないというもどかしさを感じたものです。
そこで、できる人の文章を読んで勉強しました。彼らの文章は、おもしろみはありませんが、論理的で無駄がなく一定のルールがあることに気づいたのです。
あるとき、アメリカ系コンサルティング会社に勤める人から、アメリカにはビジネス・ライティングのコースがあることを聞かされました。そこで出会ったのがバーバラ・ミントの『考える技術・書く技術』でした。
読み手の理解するプロセスはピラミッド構造になっている
文章が伝わらない原因はどこにあるのでしょうか。もしかすると、一つひとつの文章を簡潔に書いて、それをつなぎ合わせれば、伝わる文章になると思い込んでいる人がいるかもしれません。しかし、それは文体の問題にすぎません。重要な問題はもっと他にあるのです。
書いたものが不明瞭なのは、多くの場合、書き手による考えの並べ方が読み手の頭のなかの理解プロセスとうまくかみ合っていないことが原因です。
読み手にとって、もっともわかりやすいのは、まず主たる大きな考えを受け取り、そのあとに、その大きな考えを構成する小さな考えを受け取るという並べ方です。主たる大きな考えが頂上にあり、それを複数の小さな考えのグループが下で支えるというピラミッド構造になっている。これが読み手の理解のプロセスに沿った伝わりやすい文章の並び方なのです。