「戦略思考」に続いて、習得しておきたいスキルは「仮説思考」です。仕事のスピードが上がるだけでなく、仕事の質も高くなるからです。意思決定の質を高めるという意味でも、きわめて重要な役割を果たします。
思考法から発想術、文章術、読書術、プレゼン術、図解術、交渉術、成功哲学まで、本当に使える仕事術を1冊に凝縮した新刊『ビジネススキル大全――2時間で学ぶ「成果を生み出す」全技術』より抜粋し、紹介していきます。
必ず身につけておきたい思考法
仕事のできる人とは、問題の本質を素早く発見できる人、そして、その解決策に素早くたどり着ける人のことです。そのために必要なのは、問題のありかを素早く見極め、問題解決の全体像を素早くイメージするスキルです。
多くの人は結論を出す前に情報を集めようとします。情報が多ければ多いほど、いい答えが出せると信じているのです。ですから、できるだけ多くの情報を徹底的に集めてそれらを分析し、課題の本質を見極めてから解決策を見つけようとします。
しかし、それでは時間切れです。スピードの時代にそのようなことをやっていたのでは間に合いません。
情報収集や情報分析より前に、仮説を立てることです。情報の少ない段階から問題の全体像や結論を考える思考スタイル、思考習慣を「仮説思考」といいます。この仮説思考のスキルが身についていると、仕事はスムーズに進み、正確性も増します。ビジネスパーソンなら、必ず身につけておきたい思考法です。
仮説思考のスキルを身につけたTさん
私の知人のTさんは、情報は多ければ多いほどいいと考えていました。そのため、仕事の指示があると、できるだけ多くの情報を集めてから、そのうえで検証し問題の所在を突き止めるという方法を採用していたのです。
たとえば何か問題が起きると、すぐにアンケートを行いました。そこで集めたデータを睨んで、どこに問題があるかを探るようにしていたのです。このやり方では、膨大な手間と時間が必要で無駄に時間が過ぎてしまいます。
結果、一番肝心な決定がいつもギリギリで、時には納期が守れないこともありました。
そんなTさんが仮説思考のスキルを身につけたのです。すると問題解決に際しては、まず仮説思考で当たりをつけて「まだ証明はされていないが、最も答えに近そうな答え」を考えてから動くようになりました。データ集めは、その検証に必要なものに絞るようになったのです。
そのおかげで仕事が早くなり、肝心の意思決定に時間が割けるようになり、精度が上がったといいます。もちろん、仕事の納期はきっちりと守れるようになりました。