中国経済を語るには、「珠三角」、「長三角」という2つの言葉を避けて通れないだろう。それぞれ珠江デルタ、長江デルタを意味するこの2つの言葉は、中国経済におけるこの2つの地域の重みを語っている。

 珠江デルタは、本来はその名の通り、珠江デルタの略称として使われていた地理的な用語だ。だが現在はむしろ広州、深セン、東莞、珠海、佛山、恵州、肇慶、江門、中山など9つの市からなる経済圏を意味する経済用語になっている。

 一方、長江デルタも同じく上海を中心とした長江デルタ経済圏を指す言葉として使われている。現在は、上海、江蘇省の10都市(南京、蘇州、無錫、鎮江、常州、泰州、南通、揚州、塩城、淮安)、浙江省の9都市(杭州、寧波、紹興、湖州、舟山、嘉興、台州、金華、衢州)、安徽省2都市(合肥、馬鞍山)からなる。

 赤い文字の都市は最近認められたニューメンバーである。そこからも分かるように、これらの経済圏も勢力図の拡大に力を入れている。

 もし、中国経済を飛行機にたとえるなら、この2つの地域はその飛行機を推進させる強力なエンジンである。しかし、2発の飛行機は中距離を飛ぶ中型旅客機に過ぎない。中国政府は90年代後半から経済を4発の大型旅客機にしたいと考え始めている。だが、その3発目と4発目のエンジンの選択・育成作業はうまくいっていない。旧満州時代の工業基盤のある東北部(黒竜江省、吉林省、遼寧省)に期待をかけていたが、いまだにそこまでの力をもっていない。青島、煙台などの都市からなる山東半島は大きく成長してきたが、エンジンというほどのパワーがない。

 そうこうしているうちに、意外なところから変化が起きた。それは中部と呼ばれる地域の台頭だ。

 中部地域は、河南、安徽、湖北、湖南、江西、山西の6省からなる。上海、広州、深センなどがある東部(沿海部ともいう)、中部、新疆やチベットなどの自治区も入る西部、東北部という4大ブロックでは、経済成長率を見ると今年の上半期にトップを走っているのは中部だ。