そういった場所の中には、部外者に勝手に敷地内に入られると困る場所も多い。実際、地震による被害で現在立ち入り禁止中の熊本城で、男性が立ち入り禁止区域内でプレイしたと警備員に申し出たことを受けて、熊本市が任天堂に抗議している。それ以外にも、すでに出雲大社や伊勢神宮は境内でのポケモンGOのプレイ禁止をアナウンスしている。

 これからお盆を迎えるに当たって、死者を弔う場所である寺社仏閣にスマホを持ってうろうろする人が現れるのは、あまり想像したくない光景だ。この種の位置情報を用いたゲームでは、プレイヤーが訪れる対象となっている場所はまずはアルゴリズムで自動的に決定したうえで、個別の場所を追加・削除する形式となっているはず。場所選定の細かい吟味が行われないままにリリースされた感が否めないのも事実である。

 イングレスという先例はあるものの、ポケモンGOは多くの人にとって事実上「初めて触れたARゲーム」だろう。そのため、まだまだ未解決な問題は多い。規制すればいいという意見もあると思うが、世界中でこれほど多くの人が楽しんでいるゲームを一概にダメなものはダメ、と言ってしまうのはもったいない。ポケモンGOを契機として、「ARの対象にならない権利」という、今まで存在しなかった権利の確立を含めて、さまざまな社会的な調整を行っていく必要がある。任天堂もナイアンティック社も、そういった調整を根気強く行う必要があるだろう。

 既存の家庭用ゲームの場合、ファミコンで発売された「ドラゴンクエストIII」(エニックス)の発売日が1988年2月10日の平日だったことで、学校を休んだ小中学生が開店前の店に並んで補導されるなど、大きな社会問題となった。そのため、IV以降のドラゴンクエストシリーズは発売日を学校が休みとなる日曜・祝日(学校週5日制以降は土曜日含む)に決定することになった。

 プレイヤーが週末に遊べるよう、通常のゲームは発売日を週末前の金曜日や休前日に設定し、それに合わせてゲームは出荷される。ドラクエは国民的ゲームであることから、出荷が別便となるコストを負担してでも発売日を変更した。数百万のユーザーを持つ(さらに言えば、その中には小中学生や若者を多く含む)企業が果たすべき社会的責任とは、こういうことではないだろうか。