脳から来る「衝動」にはRAINで対処
「怒りに対処するためのマインドフルネスの手法はRAINじゃ。これは次の4つの頭文字じゃな。
(1)怒りが起きていることを認識する(Recognize)
(2)怒りが起きているという事実を受け入れる(Accept)
(3)身体に何が起きているかを検証する(Investigate)
(4)怒りと自分を同一視せず、距離をとる(Non-Identification)
つまり、自分が怒りを感じているという事実をあるがままに受け入れ、自分の身体に起こっている変化に注意を向けるわけじゃ。これまでどおり、自分の呼吸を意識してもいい。何度も繰り返すが、呼吸は「いまここ」から流されないための錨(いかり)じゃ。
これは怒りに限らず、あらゆる衝動にも有効だとされておる。甘いものを食べたいとか、タバコを吸いたいというような衝動的な願望(これをクレーヴィングという)が波のように押し寄せてきたときには、それを事実として受け入れながら、身体に起こる変化を観察するんじゃ。
禁煙をしている人は、これを体得するだけで禁煙の成功率がかなり高まる。これまでも名前が出てきたジャドソン・ブリューアーの報告によれば、マインドフルネスで禁煙の成功率が通常の2倍に上がったそうじゃ[*02]。彼はその知見をもとに『Craving to Quit』というアプリを開発しているくらいじゃからのぅ。なかなかの商売上手じゃて、ふぉふぉふぉ」
私はヨーダが語ったRAINを繰り返し反芻していた。今度こそ、同じ失敗は繰り返すまい。私が決意を新たにしていると、ヨーダは人さし指を立てて言った。
「ナツは真面目じゃからな。何よりも、怒りは『ゆとりのなさ』から来ることも忘れてはいかんぞ。山に登っているところを想像してみなさい。そのとき、ナツはどこを見ている?」
「……え?頂上、じゃないんですか?」