「カラスの勝手でしょ!」というのは30年以上前に流行した童謡のパロディ歌詞だが、こうした「私の勝手でしょ」という価値観が幼少期から染みついている現代の若者を指導するための、効果的な正しい手順がある。

個人主義の考えが染みついている部下には、それなりの接し方がある

 かつてテレビのヒット番組で、有名な童謡の『七つの子』を替え歌にしたギャグが大流行したことがありました。

「カラス、なぜ鳴くの~」と歌いだし、とうぜん「カラスは山に~」と続くと思っていたら、「(鳴くのは)カラスの勝手でしょ~」ときたのです。

 なんという無責任さ、自由奔放さでしょうか。当時の小学生が、大合唱していました。大人たちも「考えてみれば、そういうこともありかな」と軽い笑いで受け止めていましたが、一部のPTAからは歌詞を子どもたちが勘違いすると不快感を示し苦情が出ました。

 この替え歌は1つの象徴的な事例ですが、そういう価値観で育った子どもたちが次々と大人になり、社会に出て働くようになったのです。この「私の勝手でしょ」という価値観はその後さらに増幅されました。当時の替え歌を知らない世代にも引き継がれ、若ければ若いほど強まります。彼らは上司の持っている価値観と違う価値観で育ってきています。

 ですから、「これぐらいは分かって当然」と、上司が思っていることでも、部下にとっては、「カラスの勝手でしょ?」ならぬ、「部下の勝手でしょ?」という心境になるのです。

「どう行動するかは僕の勝手」と、
価値観の押し付けを拒否した若手の本音

 これはわたしの、それこそ勝手な推測ではありません。10年ほど前の新入社員の研修のとき、新入社員はどう行動しなければならないか、会社や上司はどのような期待を持っているかというような話をしました。

 研修のあと懇親会で新入社員が、「先ほどのお話は一応お聞きしましたが、どう行動するかは強制されたくないし、ぼくらの勝手でしょ」と大真面目に言われました。

 似たようなことを、社員研修でも彼らの本音として聞かされたことが何度もあります。もちろん、こういう人ばかりではもちろんありませんが、この事例でお伝えしたかったことは、上司の考えや気持ちが伝わらない理由はこういう時代背景や社会環境が影響していることも否定できないということです。

 上司は、「貪欲に目標に向かって努力するのは常識でしょ」と心で思い、それぐらい分かってよという気持ちでいても、部下には潜在的に「部下の勝手でしょ」という価値観があるので、鈍い動きになっているのを多く見かけています。

 これらのことを充分認識したうえで、何を指し示すかを理解してください。指し示すべき4項目と、そのポイントを取り上げてみましょう。

(1)目標です。売上目標、利益目標、原価低減目標、経費節減目標、開発目標などをしっかり示しましょう。

(2)任務です。部下に対してあいまいに仕事を渡すのではなく、しっかりとこの仕事はあなたの責任でやり切ってくださいと示すことが大事です。

(3)手順です。仕事には手順があります。部下が勝手な手順でやってはミスが出る恐れがあります。正しい手順に従って仕事や作業を進めることが大事です。

(4)価値観です。高い品質は高い価値観を、働く全員が共有していて達成できます。どこかの国のようにルールがあってもそれを無視するような価値観と低い意識では、高い品質は期待できないどころか、有害な製品まで市場に出回ります。

 これらはどの企業も重要視して社員に徹底しているはずなのですが、なかなか現実は期待通りにはいかないようです。

 次回は4項目について掘り下げて研究してみましょう