選挙戦スタート直後、鳥越氏は情勢調査で、小池氏、増田氏を上回り1位だった。だが、その後は健康問題、女性問題、政策に関して迷走する発言などで、次第に尻すぼみとなってしまった。だが、本稿は鳥越氏の都知事候補としての資質の問題については言及しない。それは、既に様々な媒体で批判されているし、今回の敗北に関して、本質的に重要な問題ではない。それ以上に深刻な問題は、民進党内のガバナンスが崩壊状態にあることが明らかになったことだ。

前回も指摘したが、都知事選で、民進党が誰を候補者として推薦するかは、二転三転した。当初、民進党都連は長島昭久元防衛副大臣の擁立が検討したが、あっさり断念となった。その後、ある市民団体が推しているという俳優の石田純一氏、元経済産業省官僚の古賀茂明氏が浮上しては消え、最後は反権力のジャーナリスト・鳥越俊太郎氏を野党4党の共闘で推薦することに決まった(第136回)。

 この候補者決定までの迷走には、共産党の強い影響があると考えられる。そこで、候補者決定のプロセスを振り返ってみたい。都連が長島氏を推していた理由は、自民党・公明党と人脈がある長島氏なら当選の可能性があり、その後の都議会での自公民協力の構図が描けたからだった。しかし、野党共闘を重視する民進党執行部はこれに反対で、枝野幸男幹事長が都連に「勝手に動いたら反党行為とみなす」と警告した。

 民進党執行部が、長島氏擁立に反対したのは、中道右派的な考えを持つ長島氏に、共産党が難色を示し、共闘を組めないからだった。結局、鳥越氏の野党共闘の統一候補としての擁立が決まった時、都連は、「党中央が決めたこと」と吐き捨て、モティベーションがまったく上がらなかった。選挙戦を通じ、民進党の応援はどう見てもやる気が感じられなかった。

 そして、なにより驚かされたのが、岡田克也民進党代表が、選挙戦最終日に、突如、民進党代表選の不出馬を表明したことだった。しかも、岡田代表はこの時期の不出馬表明の理由として、「都知事選後の表明では、敗北の責任を取ったと思われてしまう」と説明した。既に、敗北を前提としたような発言を党代表が投票日の前日にしたことには、唖然とさせられた。

 当然、鳥越陣営は「選挙妨害か」と激怒し、運動員の間には、失望が広がった。既に、鳥越氏は敗色濃厚ではあったが、この岡田発言で、最終日に更に地滑り的に得票を減らしてしまったのは間違いない。