事業運営段階

 デジタルイノベーションの領域では、事業運営の段階においても、ユーザー企業とITベンダー企業が垣根なく協業する機会が増えるであろう(図3)。一般の事業会社の本業分野における共同研究や共同開発の取り組みも活発化することが予想される。

 欧米では、ボルボとマイクロソフトが、3Dホログラムを活用した次世代自動車テクノロジーの共同開発を発表している。国内においても、富士通といすゞ自動車が、次世代自動車システムの共同研究に合意したと発表している。NECソリューションイノベータと水耕栽培システムおよび肥料の製造・販売を手掛ける協和は、農業ハウス環境を制御するクラウドシステムを共同開発したとしている。

 ユーザー企業とITベンダーがコンソーシアムを設立する動きもある。2015年7月には、国内の金融機関と国内外のフィンテック企業が集い、金融サービスのオープン・イノベーションを加速することを目的としたコンソーシアムであるFinancial Innovation For Japan(FIFJ)が設立された。また、2015年10月には、IoT・ビッグデータ・人工知能時代に対応し、企業・業種の枠を超えて産官学で利活用を促進する「IoT推進コンソーシアム」が設立されている。

 このような流れの延長線上には、ユーザー企業とITベンダーの資本提携や合弁会社の設立、ユーザー企業によるITベンダーの買収なども視野に入ってくるであろう。大日本印刷と日本ユニシスは、国際ブランドデビット決済サービスの提供などで協業しているが、大日本印刷は、2012年に日本ユニシスの筆頭株主となっている。

イノベーションはシステム会社丸投げでは<br />実現しない

 一般の事業会社が本業分野でデジタル技術を活用したイノベーションを起こしていく時代において、ユーザー企業とITベンダーという旧来の区別は意味をなさなくなるであろう。しかし、このような潮流は始まったばかりであり、成功モデルが確立しているわけではない。また、ここで紹介した柔軟な契約形態や事業運営形態は、ITベンダー側から能動的に提案されるとは限らない。従来の収益モデルを捨てきれないSI企業も多く存在する。イノベーションを求める企業は、ビジネスのパートナーとなりうる企業を選別することが求められる。