山椒は山の斜面に沿って植えられている

「斜面であるということも水はけの良さという点で重要なんです。というのも山椒の木は根が浅くデリケートで、病気などにも弱い。ここから高野山に向かう真っ直ぐな山嶺にはずっと山椒が植えられています。お盆くらいまではずっと収穫のシーズンです」

 と土田さん。山椒は小粒でもピリリと辛い、というが、実際に見るとぶどう山椒は大きい。よくみると表面はみかんのようで、山椒の木がミカン属の植物であることを想起させる。実をつまんで食べると目が醒めるような鮮烈な香りとほっぺたの内側までしびれるほどの刺激が広がった。

「海外の方からも高評価をいただいておりまして、スイーツなどにも使ってもらっています。でも、生産農家の平均年齢が非常に高く、後継者問題は大きな課題です。そもそも山椒の木は寿命が10年ほどなので、新しい木を植えていかなければいけません。しかし、利益にもならず、跡継ぎがいないとなれば、どうしてもやめてしまおうという話になります」

山椒は色づいていき、完熟させると赤くなる。赤山椒は花のような香りの高級品

 林業の問題と同じで一度、途切れてしまうと技術継承も難しくなってくる。山椒の収穫は手作業でしかできない。細い道を手押し車で運ぶのだが、収穫時期が短いので、一気にやらなければならない、という点でも大変な労働だ。

「最後のチャンスというか、これから5年が勝負と言われています。そうした意味でもできるだけ多くの方に山椒を使っていただければ」

 普段から本物の山椒を使えば、農家も潤い、地域の暮らしも保たれる、というわけだ。収穫された山椒は農家のところで乾燥までをする。そこから袋詰され、山本勝之助商店に運ばれ、冷凍保存される。そうして注文の都度挽くことで色と風味といった鮮度を保つことができるのである。

おいしい山椒を買い、味わうことで
本物の山椒が未来へ繋がる

左が種が混じった状態、右は取りのぞかれた後、種を除去することで歩留まりは悪くなるが味と風味のためには欠かせない工程だ

 さて、石臼で挽く作業を見せていただく。しかし、乾燥された山椒をそのまま挽けばいいというわけではない。普通の粉山椒は種の部分も含めて機械で粉砕してしまうが、こちらではまず振るいにかけて、中心の黒い種をとりのぞくのだ。種は油分を多く含んでいるため、それが酸化すると味を損ねる原因になる、という。

「半分、残ればいいというところやな。これをやっていると枝が爪のあいだに入るのが痛いんだよね」

 と職人の辻さんが笑いながら言った。