長引く不況で安定化志向が進んでいるとはいえ、キャリアアップのために転職を考える人は少なくない。インテリジェンス(東京都千代田区)が運営する転職サービス「DODA(デューダ)」が、サービス登録者4万人(登録時の年齢が22~39歳、転職回数0回のビジネスパーソン)を対象に行ったアンケートによると、約4割が24~26歳で初めての転職を考えるという。

転職の理由、1つは「雇用のミスマッチ」
あともう1つは!?

 転職を考え始めた年齢を聞いたところ、「25歳」(13.5%)、「26歳」(12.5%)、「24歳」(11.8%)。4割近くが入社後2、3年目の早い段階で転職を考え始めている。これは以前紹介した「働く意欲は入社2、3年目で急降下!? 調査でわかった〝若者が3年で辞める〝本当の理由」のアンケート結果とも関連づけられるだろう。もちろん、もともと数年で転職することを視野に入れて入社した新入社員などのケースも考えられるので、一概にモチベーションの低下が転職志向につながるとも言えないが、入社後の早い段階で会社に違和感を覚えるビジネスパーソンは少なくないようだ。

 職種によって転職を考え始めた年齢に差が出たことも興味深い。「営業」「販売・サービス」では「25歳」で転職を考え始めた人が最も多かったが、「企画・事務」では「29歳」、「金融などの専門職」は「28歳」、「建築・土木」は「27歳」という結果に。

 インテリジェンスでは、この原因の1つを「『企画・事務』『建築・土木』などでは、大学での専攻やスキル、資格取得の有無などから適性が比較的判断しやすいと考えられ、雇用のミスマッチが起こりにくい職種であると考えられる」と分析する。入社前に思い描く入社後の姿と実際に働いてみた状況に差があるのは、被雇用側にとってはストレスだろう。この状況に比較的陥りづらいのは、学生時代からの研鑽が仕事につながる職種。これはわかりやすい分析だ。

 また、もう1つの原因を同社では「キャリア形成に要する期間」の問題と分析する。「『営業』『販売・サービス』などでは、短期的な成果を求められることや早い段階で責任の重い仕事を任されることが多く、一方で『企画・事務』『建築・土木』などの専門性の高い職種では、細分化される専門知識をそれぞれ取得、経験していくことで中長期的にキャリアが形成される」。言い方を変えれば、営業や販売職では短期間でスキルを身に付けられる分、早い段階で被雇用者に「ここで学べることは大体学んだ」と思わせてしまうことが多いのかもしれない。

女性は男性よりも早い段階で
キャリアアップを視野に

 男女の差としては、男性の方が転職を考え始める年齢が高い傾向にある。転職を考え始めた年齢は「26歳」までは女性の方が多く、「27歳」でほぼ同率、「28歳」で男性が増え始める。産休や育休を視野に入れることもあってか、より早い段階でキャリアアップを考えるのは女性のようだ。

 社団法人日本能率協会が今年4月に発表した新入社員の意識調査では半数が「定年まで勤めたい」と回答している。安定を求める一方でなぜ、転職志望者は減らないのか。この時代、転職自体が一種の危機管理だという考え方もできるだろう。しかし、だからこそ転職はできれば前向きでありたいもの。転職の理由が雇用のミスマッチではなく、「学んだスキルを活かし、さらなるキャリアを目指すため」であればと願うのは、理想論過ぎるだろうか。

(プレスラボ 小川たまか)