BBC、ワーナーなど世界の一流企業でコーチングを行ってきた著者が、その手法を徹底解説。一瞬で「やる気」を手に入れるための8つの方法とは?『瞬間モチベーション』よりモチベーション低下に悩む人に役立つコンテンツを公開していきます。第9回はプレッシャーから自由になる思考法をレクチャー。

忙しすぎて心に余裕のないときに
人は自信を失う

デービッドはある会社のプロジェクトリーダーで、極度のストレスを抱えて、燃え尽きそうになっていました。仕事が終わって帰宅しても、2時間くらいたたないと、落ち着いて妻と接することができませんでした。会社で休みなく働いていたため、スイッチを切ってリラックスできなくなっていたのです。サイクリングなどの趣味もやめてしまいました。

デービッドは職場での自信も低下し、一部の同僚との関係も悪化しました。いつも心ここにあらずで、ミーティングやディスカッションで、自分の意見をきちんと言えなくなりました。頭が混乱して、リーダーとしての役割も果たせなくなりました。

仕事の内容が変わらなければ、自分の状態は絶対よくならないと、デービッドは思っていました。不機嫌なことが増えて、自分の肩書きにも疑問を抱くようになりました。状況を打開するには、仕事をやめるしかない気がしました。

心の中が不安でいっぱいだと、自分が状況を幅広い視野で見ているかもわからなくなります。その心理状態で、よい決断を下すのは難しいでしょう。デービッドがいかに燃え尽き、いかに立ち直ったかを、本人の言葉でご紹介しましょう。

どんな状況でもプレッシャーから自由になる3つの思考法

1「私の思考がストレスをつくっている」

多くの人と同じように、デービッドは、自分の心理状態は仕事量の増加、周囲の人々、そして複雑なプロジェクトときついスケジュールのせいだと考えていました。このように外から内を見る考え方では、(仕事でも家庭でも)なんらかの要求が発生するたびに、ストレスが大きくなります。だからデービッドは、ミーティングや電話を避けるようになったのです。それは彼なりの対処法だったのですが、問題を一段と大きくしました。仕事が滞り、周囲はデービッドの手際の悪さにいらだつようになったのです。

2「いま私が感じているのは自分の思考だ」

デービッドは、自分の抱いている感情は、周囲の人や仕事に対する自分の反応だと考えていました。だから環境が変わらなければ、自分の気持ちも晴れないと考えたのです。そこで彼は、周囲の環境を変えたり、自分の思いどおりに動かそうとすることに多くのエネルギーを注ぎました。でも、その努力は新たな思考と不安を生み、外から内への考え方を補強することになりました。

自分の感情の原因は思考だとわかると、デービッドの気分はがらりと変わりました。わずらわしい同僚は「わずらわしく感じる思考」、多くの焦りは純粋な緊急事態ではなく「急かす思考」のせいだとわかってきたのです。それまで仕事が圧倒的に見えたのは、自分の感覚のせいだとわかったのです。自分の感情の原因がわかると、それまでの思い込みは意味を持たなくなりました。こうしてデービッドは、明晰な頭脳と自信を取り戻したのです。

3「思考は選ぶことができる」

それまでのデービッドは、受け入れるべき思考と、無視するべき思考を選べることに気がつきませんでした。頭に浮かぶ思考と疑問すべてを深く検討し、分析していました。すると、思考に命を吹き込むことになり、思考が現実味を帯びるようになりました。

でも、思考の原理がわかると、デービッドは自分の思考をもっと軽く受け止めるようになりました。すべての思考を「招かれざる客」と認識し、望めば無視できると考えるようになったのです。(思考の原理を理解したことで)仕事で、『もうたくさんだ』と思っていたことの見え方が変わりました。雑音を取り除くと、仕事が楽しくなってきたんです。……見方が大きく変わったから、忙しい日も楽しくなりました。頭から雑音を取り除くと、頭の中にスペースができて、より生産的な活動ができるようになりました。

思考は、私たちの心のドアをノックしたり、私たちの心に許可なく入りこんで来ます。すると私たちは無邪気にも、彼らに最高の席を与えてしまいます。最高の食事を用意して、泊まって行ったら、と提案さえしてしまう。場合によっては、友達も呼んだらと口走ってしまいます。こうしていつの間にか、「思考の家」は満員になってしまうのです!