「(法人向けのサービスに強い)ディメンション社には、NTTグローバル事業の中核になってもらいたい」と語る三浦社長(中央)

 10月11日、NTT(持株会社)は、約3ヵ月かけて南アフリカ共和国の情報システム開発企業、ディメンションデータ社の株式の公開買い付けを成立させた。

 1999年に「NTT再編」で持株会社が発足して以来、初めてとなる大型の直接投資だ。約2860億円を投じて、世界49ヵ国の事業拠点と、約6000社の顧客基盤を取り込み、世界展開を一気に加速させることを狙う。

 7月15日の計画発表時には、NTTの三浦惺社長が「ディメンション社は、アフリカや南米、中東といった将来的に成長が期待される地域でビジネスを拡大しており、(NTTと)理想的な補完関係になる」と買収の意義を強調してみせた。NTTは、売上高3600億円(2009年9月期)のディメンション社を、NTT東西やNTTドコモなどの主要子会社と“同格”に扱うことを決めている。

 約10年ぶりに海外投資を再開したNTTに対して、通信業界内の目は冷ややかで、「過去に、総額で約2兆5000億円を投じて成果が出ていない。NTTには海外展開など無理」(大手通信会社の経営幹部)と批判の声が出ている。

 ところが、本誌の調査によると、NTTは、ディメンション社の買収によって、国際金融市場の中心である“欧州時間”で事業展開する新体制を模索していることが判明した。実際、持株会社の経営幹部の1人は、「グループ内の主要子会社の本社機能を、丸ごと欧州に移転させる構想もある」と認める。

 具体的には、事業規制を受けない子会社で、主に海外関連事業を手がける純粋民間企業のNTTコミュニケーションズの本社機能を欧州に移し、ディメンション社とがっちり組む。そして、非通信のサービス領域で地球規模に展開する、というシナリオだ。

 あくまで構想の段階だが、NTTグループが世界展開を進めるうえで、まずは“極東時間”での経営体制というハンディの克服に乗り出すのは、きわめて合理的な発想ではある。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

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