今の技術では完全自動はほど遠い
難易度の高い「レベル3」の壁

 一方、日本が批准しているジュネーブ道路交通条約では「ドライバーは運転に責任を持つこと」と規定されているため、現状の制度下ではレベル3以上車両の「システムの責任による」自動走行が許可されていない。したがって、いかに優れた技術を持っていたとしても、すべてのメーカーはレベル2までの車両しか販売することができないのだ。

 とはいえ、こうした制度が開発を妨げているわけでもない。

 たとえば、先述の日産の自動運転技術「プロパイロット」では、高速道路の単一車線のみ、前を走る車に追従して走ることができる。想定されている使用シーンは高速道での長時間のクルーズ走行と渋滞時であり、たとえ先行する車両がノロノロ運転していても、システムによる追い越しはできない。

 大半の自動車ユーザーが一般道での近・中距離移動を使用目的としていることを考えれば、現状の「自動運転車」にできることは極めて限定的であり、到達している開発段階もレベル2の初歩の初歩であることが分かる。

 将来的にレベル3の走行を認めるように法が整備されたとしても、その時点におけるメーカーの技術がレベル3のクルマを市場に投入できるほど洗練されているかは不透明だ。

 想像してみてほしい。自動運転車を購入し、気楽な気分でクルージングしながら映画鑑賞を楽しんでいるさなか、突然クルマが「路面が凍結しました。運転を代わってください」と機械音声で告げる瞬間を。ほんの数秒前にその恐ろしい事実を告げられ、パニックを起こさず運転を交替することが、果たしてあなたには可能だろうか?

 たとえ「開発者側が責任を持つ」といえども、この心理的な問題は自動運転開発に大きく立ちはだかっている。「レベル3の壁」はまだ高く険しいのだ。

 なお日産は、18年に高速道の複数車線走行=追い越しが可能な車両、20年には一般道の走行が可能な車両の市場投入を予定しているが、いずれもレベル2の枠内にとどまっている。

 しかし、これほどまでに難度の高い「レベル3の壁」突破を、世界中の政府やメーカーが目指すのには理由がある。巡航運転や渋滞時のアシストなど、運転手の負担軽減のみを追求していると目されがちな自動走行技術だが、実は、日米欧の各国が最大の目標として掲げているテーマは「交通事故の削減」なのだ。