リーマンショック後の大不況から抜け出しつつあった日本経済は、深刻な円高とデフレのダブルパンチに見舞われている。連日のように報じられる景気悪化予測に、不安を覚える人々が続出している。周辺調査をしてみると、消費者の「生活防衛意識」が、足許で急激に高まっていることがわかった。家庭の懐を蝕む不況の足音に対して、国民はどのような対策を考えるべきか? 現状を追った。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)
景気底入れの日本に忍び寄る影
「人の心まで凍らせる」不況の正体
「朝起きて見てみたら、道路に面した庭に植えている草木が何本も折られていることが、ここ数週間で何度かありました。いたずらにしては悪質です。以前はこんなことをする人はいなかったのですが……。住民の心が荒んでいるのを感じて、怖いですね」
東京都練馬区の一戸建て住宅に住むAさん(40代会社員)は、不安げにこう語る。Aさんはこの事件を駅前の交番に相談したが、巡査から「マイホームを持っている人を妬んで、家を買いたくても買えない人がやっている可能性が高い」と指摘された。巡査によると、こういった悪質ないたずらが、最近この界隈で増えているという。
住宅市場の底打ち、低金利、住宅エコポイントや住宅ローン減税などの景気刺激策が追い風となり、東京都では年初からマンションや一戸建てなどの住宅を購入する人が増えた。
とはいえ、日本の景気の先行きは依然として不透明だ。大企業までもがこぞって社員の賃金カットを続けるなか、一定水準の収入や貯蓄がないサラリーマン家庭が、多額のローンを組んでマイホームを買うことは、やはり難しい。