ノミが再び高く跳ぶ方法

 答えはシンプルだ。普通に飛べるノミを1匹そこに入れ、そのノミが1回ピョンとジャンプをする。するとほかのノミたちも、「ああ、自分はそういえば跳べるんだ」と我に返る。そして、何事もなかったかのように、どのノミも元どおり30センチ跳び始めるのだ。

 僕は、現在起業したNPO法人で企業のビジネスパーソン向けに提供している留職プログラムの参加者こそが、この変化を起こすノミだと思っている。

 自分の会社を離れることで、自分が縛られていたあらゆる枠を越えて限界まで挑戦をして、そこで本来の力を取り戻し、さらなる成長をしてくる。そういう経験をしたノミがもう一度瓶の中に戻って、「見えない枠」を壊すことで、会社という瓶の中の状況を一変させていく。
 そして、ゆくゆくは日本社会という大きな瓶のあり方をも変えていくと信じている。
 みなさんも、ぜひ1匹目のノミとして何らかの形で組織の「見えない枠」を打ち破ってほしい。

挑戦しないことが最大のリスク

「せっかくいい大学を出て一流企業に勤めておいて、どうしてNPOで起業するなんていうリスクを取れたんですか」
 起業してからというもの、そんなことを聞かれることも多い。
 それに対する僕の答えが、「挑戦しないことが最大のリスク」というものだ。

 この言葉には、2つの意味を込めている。

 誰でもいつか必ず人生が終わる日が来るものだが、その日に自分が後悔するということが、僕にとっては最大のリスクだと捉えている。
 僕の場合、青年海外協力隊から帰ってきたときの飲み会で、同期が目の輝きを失っている状態にショックを受けて、その状況に怒りを覚え、何かをしなければという強い想いを持った。
 もちろん、その想いにフタをして生きていくこともできたかもしれない。だが、想いにフタをして何もやらないまま死んでしまったら、「なぜ自分はなんの行動も起こさなかったのか」と猛烈に後悔するだろうと思うのだ。そして、そんな風に自分の人生を後悔することこそ、自分にとっては最大のリスクだと考えた。だから僕は、クロスフィールズという組織を立ち上げるという挑戦の道を選ぶことによって、後悔というリスクを回避しただけなのだ。

 そして、もう1つの意味がある。
 起業をしてからのこの5年間で実感しているのは、日本社会の流れや価値観は本当に大きく変化したということだ。