共にマッキンゼーOBである、クロスフィールズの小沼大地氏と『採用基準』の著者、伊賀泰代氏。おふたりは、マッキンゼーで何を学んだのか。そしてそれをどう生かしているのか。思い出話も交え、語ってもらった。>>第1回から読む

スパイク型人材を求めるマッキンゼー

伊賀泰代(以下、伊賀):『採用基準』の感想を聞かせていただいてもいいですか?

小沼大地
(こぬま だいち)
特定非営利活動法人クロスフィールズ代表理事。一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊(中東シリア・環境教育)に参加後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年3月、NPO法人クロスフィールズ設立のため独立。会社員時代より社会貢献活動に関心を持つ社会人向けのコミュニティCompass Pointを主宰。2011年10月には世界経済会議(ダボス会議)のGlobal Shapers Community(GSC)に選出される。

小沼大地(以下、小沼):マッキンゼーでは同期のほとんどが東大卒のピカピカのエリートだったので、私はなんで自分が採用されたのか、ひょっとして「変わり種」枠として採用されたのだと思っていました(笑)。ですが伊賀さんの本を読んだ時、自分は本流だったのかもと安心したんです(笑)。それを象徴するのが、「スパイク型人材」という言葉です。高い平均能力よりも、突出した強みを評価し伸ばそうとする。マッキンゼーは単純な地頭力を求めていたわけではなかったんですね。

伊賀:3年間働いた人でも、私の本を読んで初めて、自分がいた会社の採用基準を理解できたってことなんですね。それは本を書いた甲斐があります(笑)。

 ところで私はこの本で、マッキンゼーのことを「価値観転換機関」と表現しているんですが、小沼さんに関していえば、マッキンゼーで3年間働いて、何を学ばれたのでしょう?

小沼:色々な業界のトップクラスのビジネスパーソンの方々と一緒に仕事ができたことが大きかったと思います。「これがビジネスか」という地図を大まかに描けたことは現在の活動でも貴重な財産になっています。ビジネスの世界のスタンダードの感覚をつかんだことで、NPOの経営者になった現在でも、いろんな方と自信を持って話ができるんです。自分がどの程度まで成長したかは別として、トップレベルのビジネスマンのスキルレベルやコミュニケーションレベル、大組織の意思決定の仕組みを知ることができたのは大きかったです。

 もう一つは、フロントランナーとしての意識とプライドです。マッキンゼーは自分たちがリーダーであり、道を切り拓いているという誇りを持って仕事をしている組織でした。真似するべき対象がいないという見晴らしがいい位置にいることで、開拓者精神をもたなきゃいけないなという精神が培われました。いまクロスフィールズという組織で取り組んでいるのもフロントランナーとして新しい仕組みをつくることですが、マッキンゼーでの経験があるからこそ、そうした未知なる道を進むことへの抵抗や恐怖感がなくなったのだと思います。