オーストラリアを
オートバイで一周したときの気づき

 それでは、実際私がやっている「日本一小さい農家」風来(ふうらい)は、どのように生まれたのでしょうか。

 まず、日本では「小さい農」が向いている、いや大規模農業は向かないと感じたのが海外でのこと。

 就農するずっと前に1年間、ワーキングホリデーでオーストラリアに行っていました。

 最後の1ヵ月、オートバイでオーストラリア中を旅行したのですが、そのときによく使っていたのがファームステイ。

 これは、登録してあるファームで半日農作業を手伝うと、宿・食事代がタダ、中にはお小遣いをくれるなんてところもあって、そういったファームを転々としていました。

 どこのファームも見渡す限りの農地。比喩でもなんでもなく、地平線まで続いていました。

 肥料のやり方もヘリコプターやセスナを使い、ハーベスター(収穫機)も幅20メートルはあろうかというような、日本では見たこともない超大型機械がそろっていました。

 ちなみに、日本の農家の一戸あたりの平均経営面積は2.27ヘクタール、総農地面積が456万ヘクタールに対し、オーストラリアの平均経営面積は2970.4ヘクタール(日本の1308倍)、総農地面積が4億903万ヘクタール(同89.6倍)となっています(出所:農林水産省「農業構造動態調査」「耕地及び作付面積統計」「USDA/NASS資料」「Australian Commodity Statistics」)。

 日本の農政でも、農地の集約、大型化を進めていますが、まさに桁違いです。

 こういった農業を目の当たりにして、いくら効率化したとしても、価格競争ではかなわないと実感しました。

 そして、日本で農をやるなら、別の価値を出すしかないと思ったのです。

 価格で勝負するのではなく、味や安全性を訴求する。量より質、そのためには大きさを求めない。栽培、加工、販売を目の届く範囲でやる。そこからしか付加価値は生まれないと思いました。