クマに9回襲われて生還した専門家が教える、クマに遭遇したとき「絶対やってはいけないこと」Photo:PIXTA

岩手県で温泉施設の従業員(元プロレスのレフェリー)が露天風呂の清掃中に死亡した。クマに連れ去られ、襲われたとみられている。「人食いクマ」の出没に、SNSでは戦々恐々とするコメントが相次ぐ。クマによる人身被害はいつまで、どこまで拡大するのか。クマに9回襲われて生還した識者に、今後の予測を尋ねた。クマが「冬眠せず凶暴化」する可能性はあるのか?26~27年の見立ても聞くと、衝撃の回答を得た。(ダイヤモンド・ライフ編集部)

クマの走る速さは時速50~60キロ
ウサイン・ボルトよりも速い

 10月15日に環境省が「2025年度のクマ犠牲者が7人と過去最多を更新」と発表したわずか2日後――17日朝、岩手県北上市でクマ1頭が射殺され、近くで男性1人の遺体が見つかった。「人食いクマ」の可能性があることから、SNSでは戦々恐々とするコメントが相次ぐ。

 クマによる人身被害はいったい、いつまで・どこまで拡大するのか――。専門家からはクマが「冬眠しない」可能性すら指摘されている。エサが凶作だと栄養状態が悪いため体力を消耗しないように早く越冬に入り、逆に豊作年だと栄養状態が良くて寒さに耐えられるので冬でも歩き回ることがあるのだ。

「クマに遭遇した時に絶対にやってはいけないのは、『クマに背を向けて逃げる』こと。クマは敏感に反応し、反射的に襲う」と語るのは、日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦氏だ。米田氏は調査などで遭遇・捕獲したクマに9回襲われ、そのたびに生還した稀有な経験を持つ。有効なクマ対策について身をもって知る、まさにスペシャリストだ。

「クマの走る速さは時速50~60キロメートル。例えるならば、五輪金メダリストのウサイン・ボルト氏よりも速い。もし転ばなかったとしても、逃げ切るのは難しい」という米田氏。逃げ切れないとなると、クマが人里に出てくる「頻度」と「長期化」がいっそう気になるところだ。

 実は米田氏は23年時の取材で、「2年後(つまり25年)は今年以上に被害件数が増えるかもしれず、警戒が必要」と予言していた。まさに、その言葉は的中している。

 そこで、米田氏に10月末、11月、12月に向けた予測を尋ねた。クマ被害は日本で当たり前の光景になってしまうのか?26~27年の中期の見立てについても聞いてみたところ、衝撃の回答を得た。