ツキノワグマ写真はイメージです Photo:PIXTA

25年の死亡事故の多発を見ていると
『凶暴化』と言わざるを得ない

 米田氏に、クマが冬眠せず凶暴化する可能性を尋ねたところ、「初冬に、集落の縁辺の神社、作業小屋の床下などで浅い越冬に入っても、気温が暖かければ姿を現す」という。

「10月末~11月はまだ活動期で今の状況が続く。母グマが駆除されると、生後10カ月程度の子グマが、その場で母グマを待つ習性がある。そのため体長50センチ程度のクマが多数、目撃されるだろう。このクマが里グマ化、いわゆるアーバンベア(都会化したクマ)となる機序だ」と米田氏は指摘する。

「クマは野生獣であり獰猛(どうもう)。それは当たり前というか、生き物として紛れもない事実。なので、人間側の表現である“凶暴”という言葉は、私は本来できるだけ使いたくないのが本音」と前置きしたうえで、「とはいえ、25年の死亡事故の多発を見ていると、『凶暴化が起きている』と言わざるを得ない」

 ここで里グマ化、アーバンベアについて解説しよう。米田氏はクマが人を襲うようになった要因のひとつに、「クマの生息域が広がった」のは見逃せないという。日本の森林は、集落や市街地に比較的近く人間が利活用してきた「里山」と、人里離れた「奥山」に大別される。

 しかし、少子高齢化で里山の管理が放棄されるようになった結果、「里山も奥山化」してしまい、クマが住める環境が広がって市街地まで降りてきているのだ。