管理職は「自分の力」ではなく、「メンバーの力」で結果を出すのが仕事。それはまるで「合気道」のようなものです。管理職自身は「力」を抜いて、メンバーに上手に「技」をかけて、彼らがうちに秘めている「力」を最大限に引き出す。そんな仕事ができる人だけが、リモート時代にも生き残る「課長2.0」へと進化できるのです。本連載では、ソフトバンクの元敏腕マネージャーとして知られる前田鎌利さんの近刊『課長2.0』を抜粋しながら、これからの時代に管理職に求められる「思考法」「スタンス」「ノウハウ」をお伝えしていきます。(初出:2021年9月25日)

優れたリーダーが、「舐めた態度」をとる部下に鷹揚に接する理由【書籍オンライン編集部セレクション】写真はイメージです。Photo: Adobe Stock

「自分は平凡」と思う人ほど、
優れたマネジメントを行う

 メンバーより「優秀」でなければならない──。

 なかには、そう思い込んでいる管理職もいるようです。そうでなければ、メンバーが付いてきてくれないと考えているからでしょう。自分が「優秀」であることを証明しようと、メンバーと張り合ったり、“マウンティングまがい”のことをしてしまうのです。

 しかし、そんな必要性はまったくありません。

 いえ、むしろ逆効果です。そんなことを考えているからこそ、メンバーの話に耳を傾けるのではなく、「自分の意見」「自分の考え」にこだわったり、それを押し付けようとしたりしてしまうのです。

 その結果、管理職に相談しても不愉快な思いをさせられるだけだと思うメンバーは、話しかけることすら避けるようになるでしょう。あるいは、管理職の指示に反対をすれば、面倒くさいことになるだけだから、形式的に従うフリをしたりするようになるでしょう。

 それは一見したところ、管理職がメンバーを引っ張っているように見えることもあるかもしれませんが、その内実は空虚そのものです。管理職とメンバーの間に「信頼関係」などなく、“仮面上司”と“仮面部下”の無意味な演技が続いているだけなのです。

 だから、私は、管理職は「優秀」でなくてよいと思っています。

 むしろ、「自分には平凡な能力しかない。単に管理職という役割をもらっているだけで、みんなのほうが優秀なんだ」という謙虚さをもっている人のほうが、メンバーに力を発揮してもらうためにどうすればよいか一生懸命に考えるので、優れた管理職へと育っていく可能性が高いと思うのです。

優れたリーダーが、「舐めた態度」をとる部下に鷹揚に接する理由【書籍オンライン編集部セレクション】前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年福井県生まれ。東京学芸大学で書道を専攻(現在は、書家として活動)。卒業後、携帯電話販売会社に就職。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。その間、営業現場、管理部門、省庁と折衝する渉外部門、経営企画部門など、さまざまなセクションでマネージャーとして経験を積む。2010年にソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして数多くの事業提案を承認され、ソフトバンク子会社の社外取締役をはじめ、社内外の複数の事業のマネジメントを託される。それぞれのオフィスは別の場所にあるため、必然的にリモート・マネジメントを行わざるを得ない状況に立たされる。それまでの管理職としての経験を総動員して、リモート・マネジメントの技術を磨き上げ、さまざまな実績を残した。2013年12月にソフトバンクを退社。独立後、プレゼンテーションクリエイターとして活躍するとともに、『社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『課長2.0』(ダイヤモンド社)などを刊行。年間200社を超える企業においてプレゼン・会議術・中間管理職向けの研修やコンサルティングを実施している。また、一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事、情報経営イノベーション専門職大学客員教授、サイバー大学客員講師なども務める。